新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

中国の二つの経済傾向について(出稼ぎ問題と過剰消費)

 今日は朝から晴天でした。昨晩は雨がひどくて、ところによっては雪だったようですが、朝から晴れて暖かい日です。昨晩から風邪気味だったので、今日は午前中寝ていました。今は回復してこれを書いています。
 
 昨日は原子力発電所の事故に関する報告書が公表されていました。NHKのニュースでも管さんの行動について功罪半ばすると言っていました。NHKは民放と違って、余り過激なことを言わないので、そんなところだろうと思いました。もちろん圧倒的多数の人は管さんをぼろくそにけなすでしょうが、物事は外からみるほど簡単なものではありません。
 
 特に民主党のように、生まれて初めて政権について、政府を動かしたのですから、緊急時にどう対応してよいか動揺したと思います。おじさんも、教師をやっていて、若い頃は分からずにやったことも、経験を積んでから考えれば他のやり方があったのにと思います。
 
 小泉政権以降の首相のだれがやっても、うまくいったとは考えがたいです。もし、戦後の政治家でうまくやれたとしたら、吉田茂田中角栄くらいでしょう。100年に1回レベルの大災害に対応できるのは、修羅場をくぐって腹がすわっており、人生経験も、政治経験も豊富な人だけです。今人気の橋下さんでもうまくやれた保証はありません。
 
 さて今日は、JBプレスをいうサイトを見ていたら中国に関するおもしろい記事がありました。このサイトはエコノミストなど海外の記事を載せているのです。一つは現在の中国で起こっている出稼ぎ労働者に関する変化です。じつはおじさんも半年前まで中国にいたので肌で感じていたことです。
 
 やはりその国に住んで、そこで観察するのとマスコミの報道だけで考えるのとでは相当違います。記事では出稼ぎ労働者がだんだん沿岸部に出ないで地元の都市で働くようになったというものです。特に現在は四川省重慶市(ここは市と言っても日本でいう政令指定都市で人口3千万人、広さは北海道くらいあります。ちなみに上海でも人口2千万人です。)を中心とする西南部の発展が著しいです。
 
 四川省を中心とする西南部(四川・貴州・雲南省重慶市)は以前は中国でも最も貧しい地域の一つでした。現在は政府の西南部大開発のおかげで、重慶市で言えば経済成長率も17%四川省省都成都で16%くらいまで行っているようです。おじさんも西南部のある都市に3年間住んでいたので実感できます。
 
 発展の理由の一つは多くの工場が建設されていることです。沿岸部はすでに地価や人件費が高騰しているので、内陸部へ進出しているのです。中国でも報道されていましたが、重慶市にはHP(ヒューレットパッカード)の大規模な工場ができています。自動車産業も盛んです。
 
 この街のトップの薄書記(中国では市長より党書記の方が偉いのです。)は中国の政治のトップである政治局入りがうわさされています。ところが側近の副市長がアメリカへの亡命を企てたとのうわさも流れて大変なようです。その重慶市では、中国のニュースでもやっていましたが、都市戸籍を農民にも自由にとらせる方針のようです。
 
 重慶市はいつも中国の先頭を切って新しい試みをやるようです。農村出身の学生さんにあなたも都市戸籍をとりますか聞いてみたのですが、必ずしも農村の人は都市戸籍をほしがらないとの答えでした。理由は都市戸籍を取ると、農村にある土地を国に返さないといけないそうです。日本のように住民票だけ都市にして、本籍は農村というわけにはいかないそうです。
 
 つまり、都市戸籍をとると、故郷の全ての土地と権利を失ってしまうのです。失業したからと言って農村に帰るわけにはいかないのです。それに、農村共同体としてもっていた繋がりを全て失ってしまうのです。
 
 都市戸籍を手にいれてもそれだけて有利な仕事が見つかるわけでもないのです。それに農民はやはり土地から切り離されることに不安を持つと思います。農民にとって一番よいのは、農村に根拠をかまえて、近くの都市で働き現金収入を得ることでしょう。今それが一部ですが実現されつつあるようです。そうなれば、中国での格差是正へと繋がり、政治的にも安定するでしょう。
 
 もう一つは、インドなどの新興国と比べて中国が過剰消費しているということです。その理由としてJBプレスの記事は、公務員を退職した親の世代が多くの年金を貰っていることを挙げていました。じつはおじさんの勤務した大学も国立大学で教員は国家公務員に準じる待遇でした。
 
 ある時お世話になった先生が定年になりました。中国では何と男女によって定年の年が違うのです。男女平等の国だと思っていたので意外でした。男性は60歳・女性は55歳です。定年でがっかりしたのかと思ったら、定年になっても年金が今の給与の80%くらいもらえるから平気なようでした。
 
 逆に言えば仕事は定年でなくなったのに、給与はそれほど減らないので、こんなよいことはないのです。それに中国では夫婦共稼ぎが常識なので、ご主人のお世話や孫の世話ができてさらに好都合なのです。この先生のご主人は大学の管理部長(副学長の次に偉い人)なので、高給取りです。お嬢さんは結婚してオランダにいます。その先生はお嬢さんの出産と育児のお手伝いにオランダに半年行っていました。中国というと貧しいイメージですが、現実にはそんな世界もあるのです。
 
 また、公務員は職場の近くに住むのが原則ですが、(大学であれば大学構内)そこのマンションを安く購入することができます。同僚の先生は大学構内に3か所くらい部屋を持っています。それ以外に投資として海南島にも部屋を持っているようです。大学の先生の間でも不動産投資は人気です。
 
 公務員で退職した人の子供は当然親に仕送りをするどころか、親からマンションを買ってもらったりします。男の子でも女の子でもマンションを持っていることは結婚に絶対的に有利です。最初の年に出会った大学院生の女性もすでに親からマンションを買ってもらったと言っていました。
 
 最近結婚した大学院生(日本にいる指導学生さん)の弟さんも結婚してすぐ親の援助でマンションを買ったそうです。このように、現在は成功した親や公務員だった親が子供を支えているので消費が盛んなのです。それともう一つ、JBプレスにも書いていましたが、中国では家族全員が働くのが当たり前なのです。
 
 中国にも専業主婦の人はいますが、とても少ないです。専業主婦などしていると、お姑さんから、自分の食いぶちくらい自分で稼げと言われるそうです。その代わり、子供の世話は祖父母がします。社会主義の国なので、子供は皆保育園に行っているかと思ったら、圧倒的に多くの子供が祖父母によって育てられていました。
 
 農村から都会にでた親の子供だけでなく、都市部で働く子供も祖父母が育てているのです。大学構内にも幼稚園(保育園の機能もしています。夜8時過ぎまで預かります。)がありましたが、圧倒的に多くの子供が祖父母によって育てられていました。(公園やグランドはそんな子供が大勢いました。)小学校の送り迎えも祖父母の仕事です。(中国ではご存じのように幼児誘拐が多いので、必ず小学校には御迎えが来ます。)
 
 逆に孫の面度をみせてくれるからこそ、祖父母が子供たちの援助をすると言ってもいいでしょう。祖父母によっては、孫の面度をみせてくれないなら援助をしないと言っている人もあるくらいです。ただ祖父母の孫の面度をみてもらうと過保護になるのはやむを得ないところです。
 
 とにかく、中国において現在膨大な消費があるのは間違いありません。それまで貧しかっただけに、その反動がでているとも言えます。例えば食堂で注文すると、出てきた料理は油の上に浮いているほど油を使います。しかし、40代後半の先生によると、自分達が若かった頃はクーポンがないと油を買えなかったといいます。
 
 油は貴重品だったのです。もちろん旺盛な需要を満たすべく膨大な供給がなされています。スーパーには商品が山積みされています。13億人に一人毎日1個卵を食べさせるだけでも1日13億個の卵を出荷する必要があります。気が遠くなるほどの数量です。
 
 中国が内部分裂を起こすと予想する人もいますが、おじさんの実感では、今の生活を維持したければいやでも今の社会システムを維持しなければなりません。広大の国土と膨大な人口をまとめ上げるのは並大抵のことではないと思います。
 
 中国政府がもし、今の生活水準を維持できなくなった時、それはスーパーから商品がなくなる時でしょうが、その時は政府は崩壊の危機にひんすると思います。チャイナーウオッチャーは、いつも地方のスーパーの商品打たなを観察しておく必要があるでしょう。
 
 明日は散髪に行く予定です。