新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

おじさん中国の大学でガレージセールをするの巻

 今日も朝から晴天です。北陸の方は豪雨で大変なのに西日本のおじさんの地方はこのところ晴天続きです。庭の水やりも大変です。隣家は今家の建て替えの真っ最中です。大工さんは朝早く(朝8時頃)から来てやっています。今日は何とか枠組みだけは完成させて、餅まきです。(おじさんの地方では、枠組みができた時点で施主の方が餅をまく習慣があります。
 
 工務店さんの方から近くのお家にビラがくばってありました。なかなか気配りのある工務店さんです。おじさんの今住んでいるところは、30年くらい前に開けた新興住宅街なので、最近家が建つことはほとんどありません。以前は空き地に家が建つと餅まきがあるので、うちの子供たちは楽しみにしたものです。
 
 さて、今日は中国の大学の面白習慣について書きます。実は学生さんが卒業して寮(宿舎)を退去する際、自分の持ち物を売るのです。ガレージセールというのは比喩でもちろん、ガレージ(車庫)で売るのではありません。大学の学生会館のようなところの前の道路で売るのです。簡単に言えば露店です。(歩道にシートを引いて商品を並べます。もちろん学生さんである限りだれでもOKです。)
 
 学生会館というのは、これも比喩で、この建物にはスーパーや食堂などが入っています。その隣は、郵便局や銀行のキャッシュコーナーなどがあります。道を挟んで向こうには、バトミントンのコートなどがあります。
 
 そこがおじさんの地区のメインストリートなので、例年、卒業生がそこに露店を出して、本や衣類、靴、電化製品などを売ります。買い手は学生さんというより、近所(大学の外の人)のおじさん、おばさんなどです。学生さんよりお金はたくさん持っています。
 
 今年はインフレなのか、このガレージセールに大勢のおじさん、おばさんが来ていました。おじさんが売りに出したのは、衣類の他に電気スタンドや食器、それにシーツなどです。などです。学生さんの場合なんと、布団を売っています。これは、寮の布団は自前だからです。(おじさんは、大学からの支給です。)綿を打ち直して、使っているようです。
 
 さて、最初の日(実は3日もやったのです。)恐る恐る商品を旅行ケースと大型袋に入れて、皆がセールをやっているところに行きました。こちらは大学の教員なので、何も怖れる必要はないのですが、日本人なので、街の人から何か反日的な言動があったらいやだなと思ったからです。
 
 実際は何もありませんでした。売り手の学生さんも好意的でした。自校の教員ですから、当然なのですが。ただ、大学の警備員さんから、外部の人間は商売をしてはダメだと言われました。それで、まずいと思ってやめたのですが、考えてみれば、何も言われる筋合いはないと思って、隣の学生さんに、一緒に売らせてもらうように頼みました。(つまり学生さんのシートの上に商品を並べること)もちろん学生さんはOKです。(交渉は英語でやりました。)
 
 何と警備員はおじさん達が学生さんと一緒に商売している限りは何も言いませんでした。さすが中国だと思いました。これはスーパーのカードの時も感じました。スーパーのカードを隣の人から堂々と借りてレジに出すのです。日本では考えられませんね。おじさんが単独でシートを敷いて売るのはいけないが、学生さんのシートに置いて売るのはOKなのです。融通無碍なところが中国なのです。
 
 日本人だし、おじさんだし、きっと品物など売れないだろうと予想したのですが、全く間違いでした。荷物を持って売り場に着くか着かないうちに、大勢おじさん、おばさんがやってきて、勝手に袋やケースを開けて品物を確保するのです。それが10人以上いるのです。良い品物だと取り合いです。
 
 それから、値段を猛烈に値切り始めます。余りの迫力につい安くしてしまいました。そうすると物が飛ぶように売れるのです。そして、あっと言う間に売り切れてしまいました。それでも、150元(1800円くらい)売れました。中国はご存じのように100元が最高額紙幣です。ラーメンが1杯6元(80円)バスの初乗りが1元(12円)の世界ですから、150元というのは、日本では1万円以上の収入の感覚です。
 
 2回目は他の大学の学生さんについて来てもらいました。すると、また大勢おじさんやおばさんが集まって傍若無人にふるまっていました。彼は普段は温厚なのですが、さすがに中国の若者です、大声でいいかげんにしろと(多分そうだと思いますが)怒鳴りました。するとおじさん、おばさんたちはしゅんとなりました。
 
 それからはちゃんと商売になりました。おもしろかったのは、ビートルズのCDを売りだしたのですが、全然売れませんでした。それで、ある学生さんに英語で話しかけて無料でもって行ってもらいました。すると彼は、別の場所でそれを売り始めました。もちろん何の問題もありません。
 
 一番高額で売れたのは、食器セットです。最初ばらばらに売るつもりだったのですが、ある人がこれ全部まとめて買うから100元にしてくれと言いました。もちろん買った値段はその数倍です。それでいいですよと言うとその人は無造作に100元札を出して買いました。
 
 中国の庶民も結構お金を持っているものだと思いました。なかには、とても貧しそうなおじさんが、大型ハンガーをほしそうに持って、3元(40円売値は5元60円)でどうかと言ってきました。もちろんそんな庶民の方に喜んでもらうのが目的なので、OKしました。彼はうれしそうな顔をして持って行きました。
 
 日本人からこれを値切って買ったと仲間に話すのでしょうか。結構盛り上がったかもしれません。また、次々に値切って買ったおじさんがいました。そのおじさんは相当得をしただろうなと思っていました。しばらくして、そのおじさんが、私たちにアイスキャンデーを差し出しました。儲けさせてもらったお礼なのかもしれません。にこにこしていたので、そうだろうと思いました。(これも日本ではちょっと考え難いですね。それを見ると中国人だからと言って反日の人ばかりでないと思いました。)
 
 もちろん、反日的な言動などあるはずもありません。おじさんは正規の大学教員で、堂々と売っているのですから。(大学構内のど真ん中にいる日本人ですから、誰が考えても大学の先生以外ありません。)結局3日間で950元(約1万円)になりました。学生さんに話すと、信じられない金額だと言いました。学生さんの場合売上は60元(800円)くらいなのだそうです。
 
 中国で950元と言えば日本の金銭感覚で10万円くらいです。中国の大学生の初任給が2000元(2万5千円くらい)なのですから。日本の大学生の初任給から判断してもらえば、初任給の半月分になります。日本の中古バザーなどでも一万円の収益と言えばまずまずでしょう。
 
 お金儲けより、中国の庶民を相手に商売したことの方がとても楽しかったです。分かったことは、とにかく中国人はまず値切るが、本当にほしかったらこちらの言う値段で買ってくれるということです。中国人の学生さんに任せたら、おじさんたちの言う値段で全て売りきってしまいました。(値下げ交渉して決裂すると、一度はその場を離れますが、本当にほしいとまた戻ってきます。それは本当にほしいという意思表示なので、今度は余り無茶な値切りはしません。そして、ほとんど言い値で買ってくれます。)
 
 こちらでは、国立大学の大学生と言えども、街のおじさん、おばさん相手に負けずに商売できるようです。やはり中国人は上から下まで皆逞しいと思いました。日本の大学生ではちょっと難しいかもしれません。
 
 明日は久しぶりに教会へ行きます。