新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

中国戦争ドラマ考

 今日はさすがに冬らしくなりました。ちょっとですが雪も降りました。夕方からは教会でイブ礼拝があるので行きます。中国でもクリスマスは年年盛んになってきています。もちろん商業ベースですが、かって文化大革命の頃は西洋的なものを一切否定したのに、今はその片鱗もありません。
 
 おじさんのいた国立大学でも堂々と留学生クリスマス祭には、キリストの降誕劇が許される時代になりました。一般の学生さんもおじさんに向かって「メリークリスマス」と声をかけてくる時代なのです。
 
 文化大革命の時代の品々やビデオは今では観光地の骨董屋さんで売っています。40代以上の人が懐かしがって買っています。紅衛兵バッチや腕章、毛沢東語録、などが売られています。さすがにテレビでは文化大革命を題材にするドラマはありません。まだ傷跡が残っているからです。ただ文化大革命を主導した林彪も失脚させられた指導者たちも、日中戦争国共内戦のドラマでは英雄として描かれています。
 
 大学の先生によっては、下放で農村へ行き文革終了後大学に入ったという先生もいます。日本の全共闘時代と重なりますが、中国に与えた傷は全共闘運動に比べてとても大きくまだ公然とはドラマに取り上げにくいようです。
 
 さて昨日中国と韓国・北朝鮮について書いたらコメントがありました。昨日書きもらしましたが、中国人の韓国に対する思いを表すジョークがあります。「孔子が韓国人だって知っていた。」というものです。ある時大学院生の人から「先生端午節の起源は朝鮮ですか。」と聞かれました。
 
 端午節のちまきは間違いなく楚の屈原にちなむ行事なので、そんなことはないでしょと言うと、サイトで調べたらそんな説が書いてあるというのです。この一言からも中国人の韓国・北朝鮮に対する意識が良く分かります。
 
 ところで今日はある方が雲南での日本と中国の戦争についてコメントされていたので、中国で観察した戦争ドラマについて書きます。日本の方が考えているのとは随分違います。もちろん、おじさんが滞在した3年間の出来事で、以前とは随分違うと思います。
 
 戦争ドラマは大きく、日中戦争国共内戦に分かれます。朝鮮戦争は一度だけ見たことがあります。日中戦争と言えば読者の皆さんは反日色の濃いなんだか政治宣伝のようなものをイメージするかもしれませんが、実際見てみるとちょと違います。
 
 古いドラマを見ると日本軍を鬼畜あるいは漫画的に描いていますが、最近のものはきちんと描いています。ここでいうきちんとというのは、日本軍は優秀な指揮官がいてと優秀な軍隊という意味です。実は南京大虐殺のような中国が大敗北するドラマはないのです。(歴史的に見て中国が勝利したものが中心だからです。もちろん、中国軍の勝利は宣伝だと言う研究者もいますが、とりあえず中国でそう信じられいるものです。)
 
 もちろん、ドラマの中では共産党軍が中心ですが、国民党軍も勇敢です。日中戦争では圧倒的に国民党軍が勇敢に戦っています。一つは史実がそうなっているからです。2年くらい前その年のテレビドラマ大賞の候補になった「私の団長私の団」は雲南における日本軍との戦い描いたものです。
 
 もう一つの「潜伏」が賞を取りました。こちらは国共内戦です。どちらもおじさんは見ました。「私の団長私の団」では国民党の指揮官がとても優秀です。このドラマで意外だったのは、彼ら中国人に協力して英雄的な死をとげるアメリカの軍人の姿です。他の雲南での戦いを描いたドラマでもアメリカの軍人が勇敢に戦って死にます。それはまるで中国の軍人以上に英雄的です。(自らの死を持って中国軍の窮地を救うのです。)
 
 テレビドラマは一般大衆が見るし、政府がもちろん検閲しているので、庶民と政府両方が共有する価値感が表れていると思います。それを見ても日中戦争ではアメリカ軍の物心両面の援助を受けたことを国民党だけでなく共産党も感謝していることが良く分かります。中国のドラマというと政治宣伝だとお思いの方も多いでしょうが、中国語は全く聞き取れず、画面の字幕だけを見て理解している日本人でも本当におもしろいと思いました。
 
 ドラマとしての完成度も高いです。前述したドラマでは日本軍と1月以上にわたって死闘を繰り返します。雲南に関するドラマでは、とても優秀な日本軍人がでる他のドラマも見ました。もちろん、日本軍を好意的に描くことはありません。逆説的ですが、あんな勇敢で強力な日本軍を中国人は一体となって打ち破ったのだということを言いたいようです。
 
 国共内戦でも、勝利したのは実は国民党側から多くの投降者がでたことがドラマで分かります。これは案外専門家以外には知られていないのですが、ドラマでは司令官自身が共産党軍に協力するものもあります。と言っても当然ですが、彼らは裏切り者としてではなく、真の英雄として描かれます。中国共産党自身も自分達の力だけでなく、国民党軍内部の崩壊を勝利の原因だと認めています。
 
 もちろん国民党についたまま死ぬ将軍も公平に描きます。今話題になっている新疆ウイグル自治区は、ある国民党の将軍が中国建国後に共産党軍に引き渡したものです。もし、その将軍が引き渡しを拒否して抵抗したら、多分ソ連の介入を招いたと思います。そんなドラマも見ました。
 
 それに反対した国民党の部下たちのことも描かれていました。その将軍は部下の中で、引き渡しに反対するものを自由に立ち去らせます。(その場面がドラマに出ます。)その将軍は文化大革命時も生き延びて今でも共産党から英雄とたたえられ、将軍の称号を持ったまま亡くなっています。
 
 蒋介石も決した漫画化されたり、鬼畜あつかいされません。蒋介石のそっくりさんは、人気なのです。ある観光地では蒋介石のそっくりさんと一緒に写真を写す場所がありました。(西安事件の観光地)学生さんに聞くと、悪役だが人気はあると言っていました。
 
 また「潜伏」のドラマは共産党側の協力者が国民党側の特務機関に潜伏する物語です。その主人公の上司はなかなか立派な人として描かれています。ですから、国民党・共産党と言ってもそれはある種立場の違いという面もあります。
 
 学生さんがある時、チベットと新疆ウイグルを独立させたら中国の領土は半分くらい減りますと言いました。もちろん、その学生さんは党員でもありません。一つの島でさえそれを失うことは大変な国内問題です。チベット独立や新疆ウイグルの独立問題はそんなに簡単なものではないと思います。
 
 もしアイヌ民族が北海道の独立を主張したり、かっての琉球王国を引き合いに沖縄が独立を主張したとしてもそんなに簡単にはいどうぞとはいかないのと同じことかもしれません。ただ言えることは、中国人はチベットを仏教の古里としてとても大事にしていることです。
 
 中国にいた時チベット民族舞踊を見に行きましたが、そのS席の代金は何と大卒初任給の1,5倍でした。日本の金銭感覚で言えば30万円くらいです。おじさんたちも日本で言えば3万円くらいの代金を払っていきました。市の芸術劇場でありましたが、ダフ屋が出るほどで、もちろん満席でした。(観劇のマナーは今一つですが)
 
 やはり中国のことは日本国内で日本のマスコミ報道だけでなく、中国で中国の庶民と一緒に暮らして、自分の目で見ないとわからないと思いました。
 
 明日はクリスマス礼拝です。