新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

主要矛盾と付属矛盾ー現代社会への応用

今日は朝から晴天でした。午前中は明日の授業準備です。来週までで授業はいったん終わりで、6月6日から中間考査です。中間考査がこんなに遅いのは2学期制だからです。

 今回の試験範囲はエッセイと小説、中心はあの有名な羅生門です。羅生門は良くできた小説なので出題に適した個所が沢山あります。ただ、余り学力が高くないクラスがあるので、難しい問題だと赤点(欠点)者が多数でそうです。さりとて、もう一クラスは学力優秀なので、余り簡単だと平均点が80点とかなって困ります。

 とりあえず、問題は作成しました。今週の授業の反応をみながら来週の水曜日印刷にまわします。今日の株式相場は、とりあえず高値をつけました。と言ってもこれまでの下落の反動程度です。ヨーロッパの金融情勢が不透明なままではどうにもなりません。

 ところで、先週の大学院の中国経済論で先生が、「毛沢東は若い頃尊敬していたが、後の歴史を見るとずいぶん悪かったようだね。でも実践論矛盾論はなかなか良くできた本だったよ。」と話しておられました。先生はおじさんとほぼ同世代です。今年で定年のようです。

 日本では毛沢東の評判は最低で、今頃の大学生で実践論矛盾論を読む人はいないと思います。おじさんの頃は大学生の必読書でした。おじさんが大学生くらいの頃に文化大革命が始まったのです。この文化大革命は現在の中国政治指導者にも大きな影響があったようです。

 ところで、この矛盾論のいちばん有名な内容がこの「主要矛盾」と「付属矛盾」です。対立二つの問題の間には矛盾があると言うのが毛沢東の主張です。その中でも、目の前にある「付属矛盾」と、その奥にある本質的な「主要矛盾」とがあると言うのです。

 つまり、本質的な「主要矛盾」を解決しなければ、いくら目の前の「付属矛盾」を解決しても、矛盾の解決にならないと言うのです。たとえば橋下市長が取り上げる公務員の刺青問題など、まさに「付属的矛盾」です。刺青職員を排除しても、「主要矛盾」である大阪の隆盛とは結びつかないのです。

 教育条例や家族条例、職員条例なども同様です。原発再稼働問題も同様です。それではなぜ橋下市長はそのような「付属矛盾」だけを取り上げるのでしょうか。実は「主要矛盾」を解消するのは、時間も労力もかかるし、簡単には解消できないからです。

 現代のような、ものすごい情報量の発信の中で少しでも発信量が落ちればあっと言う間に世間から忘れされてしまいます。東国原元知事や舛添代議士などこのごろさっぱり姿を見ません。これで後1年も選挙がなかったら完全に賞味期限切れです。

 橋下市長は賞味期限切れにならないように常に情報発信をしなければならないのです。それも、すぐ眼の前にあって、皆こうあってほしいという願いをすばやくキャッチして、解決策を提示するのです。素早さつまり賞味期限が大事で、本質的な問題を長期的にじっくり地道に一つの問題に取り組むのはだめなのです。

 インターネット社会は、誰でも自由にかついつでも政治参加できる社会です。そのような社会では、本質的で、時間がかかり、地道に、議論を重ねて説得する必要があるような問題は嫌がられます。すぐに、単純でわかりやすく、誰でも受け入れやすい内容を発信することが一番大切なようです。

 おじさんが考える現代社会の一番の主要矛盾はやはり少子高齢社会をどうするかです。しかし、ある人は主要矛盾は憲法だと言います。そうは言っても、憲法を改正しても、人口減少は食い止められないし、財政破たんも食い止められないでしょう。

 かって、鄧小平は「黒いネコでも白い猫でもネズミを捕るネコは良い猫だ。」と言いました。彼は当時の主要矛盾が国の貧しさであることを知っていたのです。改革開放政策がもたらす付属矛盾についても十分知っていたと思います。しかし、付属矛盾を後回しにして、主要矛盾の解消を先にしたのです。

 現代日本で鄧小平のようなことを言ったら世論とマスコミの袋叩きに会うでしょう。小沢さんの生き方がちょっとこれに似ています。能力があれば、少々灰色のことをしてもいいじゃないかと言っているようなものです。大阪市で言えば、能力があれば刺青くらいどうでもよいからどんどん仕事して、大阪経済を盛り上げなさいと言っているようなものです。

 日本社会の良い点は瑣末なことについても細かくやることです。中国にいた時中国人の先生から日本人は細かすぎると言われました。中国人の場合、途中経過より結果オーライのところがありました。あの国ではそれで結構うまくまわっているのです。

 敗戦直後から高度成長期までの主要矛盾は経済復興でした。ですから、傾斜生産のように他の部門を犠牲にして炭鉱や鉄鋼部門に全てを集中しました。今他の産業を犠牲にして特定の産業を援助するなど現代では考え難いところです。

 現代の主要矛盾は全体に配慮しすぎるために、何も矛盾が解消されないことかもしれません。今日もまたとりとめのない内容になってしまいました。明日は授業です。