新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

大学院発表資料「中国の農村と農業」

今日は午前中は曇り空でしたが、午後からは少し晴れてきました。台風の影響はなさそうです。株価は少し戻しましたが、本格的な回復には程遠そうです。日本を代表する企業が軒並み年初来安値や20年来の安値をつけています。日本経済の弱さが露呈した感じです。

 やはり内向きの姿勢がこのような結果を招いたのだと思います。今日はそんな経済の話はさておいて、明後日の発表の概要を事前に読者のみなさんに報告します。

 授業で使っているのは、中国経済入門という本です。なかなかしっかりした内容の本です。とうとうおじさんにも発表が回ってきました。演習に参加している7人の学生さん(大学院生)は全員中国人です。日本の大学院のそれも現代経済のゼミで、全員が中国人というのも現代の日本をよく象徴しています。

 さて、今回の発表はまず人民公社の解体から始まります。毛沢東が推し進めた、というより彼が理想として人民公社は、失敗します。理由は農民の意欲の低下です。社会主義が失敗した最大の理由は、人間は理想よりお金の方が働かせる力(インセンシテイブ)があることを見誤ったのです。もうひとつは、現実の市場動向に基づかない計画経済は無力だったのです。

 ところで、人民公社はある村の秘密の約束から崩壊を始めます。ある村で秘密裏に請負制を始め、これが瞬く間に全国へ広がり、人民公社は解体されます。その後一部の農村では郷鎮企業もでき次第に豊になっていきます。かっては2億人もの貧困人口があったのに、今では4000万人まで減少したと述べられています。

 作物も食料から商品作物へと転換しています。今一番多く栽培されているのは油を採る作物です。そう言えば中国の庶民の油の使い方は半端ではありません。料理を見ても油の中に野菜や肉が浮いているような感じです。かっては、油は配給制で貴重品だったそうです。

 広義の農業(農業・漁業・林業・牧畜業)においても、牧畜業の伸びが著しいのだそうです。日本でもかっては、肉は貴重品でした。生活が豊かになれば、肉の需要が高まるのだと思います。また農村での消費も活発で、一番所有の伸びの大きいのは携帯電話で、次がカラーテレビです。ただ、農村の労働生産性が低い点が問題です。

 農村ではいまだ多くの過剰労働力があります。もちろん農民工として都市に働きに出ている人も多いのですが、そうでない人も多いようです。土地の生産性については向上が見られますが、生産規模の大規模化が求められています。そうなれば、さらに労働力があぶれることになります。

 農業の機械化も相当遅れています。農業生産の向上は化学肥料の投入や各種の農業機材の使用によって向上しました。しかし、農業の機械化については小型トラックター以外はほとんど農村では進んでいません。日本で見られる軽トラックのたぐいもほとんどありません。(小型トラックターを軽トラック代わりに使っています。)

 著者はまず農村の過剰労働力を地域の都市が吸収し、その後経営規模の拡大を行い、土地の生産性を上げ、同時に農業の機械化を進めるべきだとしています。また農村戸籍都市戸籍についても、一気になくせば大都市にスラムが形成される可能性があるとします。

 現在試行されている農村戸籍から都市戸籍への転換でも、農村戸籍から離脱する場合、所有している土地を政府に返還しなければならないのです。つまり農村戸籍から離脱する農民は帰るべき土地を失い、もし都会で失敗してもどこにも生活の保障がないのです。

 農村戸籍のままであれば、農村に帰って最低限度の自給自足レベルの生活ができるのです。さりとて、農村に土地を持ったまま都市でると、使われないままの農地が農村に残ります。どこの国でも農業及び農村問題は解決が難しいようです。

 日本のマスコミが言うように、都市戸籍農村戸籍の区別をなくせば全て解決するとはいかないのです。明日は授業なのでブログはお休みです。