新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

日本を取り巻く合従連衡の現状

今日も晴天です。とうとう本格的な夏に突入してしまいました。節電なので、クーラーをやめて扇風機だけにしています。ツマクマが家の前にゴウヤを植えて緑のカーテンを作ったのが相当利いて涼しいです。

 株価は少し戻しました。株価が上がらないと消費も伸びないと思います。株式を保有している人はもちろん、そうでない人もニュースを見るたびに景気が悪いから財布のヒモを引きしめようということになります。と言っても今の世界経済では、株価の上昇は望めそうにありません。

 さて、今日はJBプレスというサイトでおもしろい記事をみつけたので、それに関連して書きます。昨日どの政党が政権を握っても、誰が首相になっても選択できる政策の幅はほとんどないと書きました。特に外交問題についてはそうです。

 中国の古代、強大化する秦に対して周辺諸国はどう対処するか悩んでいました。問題は各国が秦と対立しているだけでなく、その他の諸国とも対立していたのです。

 周辺諸国が連合して秦に対抗するのか、秦と親しくして守ってもらうのか二つの立場がありました。前者は連衡(れんこう)であり、後者が合従(がっしょう)です。現在の日本がまさにこの状態にあります。

 以前から書いているように、日本と周辺諸国とは微妙な関係にあります。東アジアでは、韓国・北朝鮮・台湾・があり、他にロシアもいます。太平洋をはさんではアメリカです。東南アジア諸国ASEANという連合体を作っています。

 さらにオーストラリア、インドまでが中国を囲む関係国と言うことになります。東アジアで中国と合従しているのは北朝鮮です。

 ところで、日本の立場はどうなるのでしょうか。合従ということは考えられません。敗戦時の数年間を除いて外国の支配下になかったのですから、当然です。となれば連衡ということになります。極端に言えば中国包囲網あるいは中国封じ込めは可能なのでしょうか。

 日本の周辺国で日本と問題を抱えず、中国と敵対的な関係にある国はどのくらいあるでしょうか。韓国・ロシアは軍事的にも経済的にも強国ですが、中国包囲網に加わる可能性は少ないです。日本はこの両国と領土問題を抱えているからです。

 また、韓国の場合反日感情というものがあります。外交は内政の延長です。日本も嫌韓感情の強さはブログやコメントの中にも強くでています。政治体制や経済力、軍事力などから考えたら韓国と米国も含めた日米韓の三か国協力体制が一番連衡としては望ましいのですが、日韓両国の国民感情から難しいようです。

 日米韓台の4カ国同盟となれば、尖閣諸島問題で日本も強く出れるのですが、無理でしょう。台湾も尖閣諸島については自国の領土だと主張しています。これについては、あれは一部の人間の跳ね上がり的行動だというのが、保守派の人の意見です。

 そうでも思わなければ台湾との協調関係を主張してきたのですから、主張が誤りと言うことになります。事実は良く分かりませんが、台湾政府が日本の立場を公式に認めることはありません。こんな経過から、最強の四か国同盟は無理でしょう。

 そうなれば、中国は合従政策に出ます。中国の得意技は個別撃破です。韓国とは経済的に強い結びつきがあります。また北朝鮮問題解決には中国の力を借りなければなりません。日本と中国どちらにつくかという場合、経済的利益を捨て、反日感情を抑えてまで日本につく理由はないでしょう。

 中国と衝突した場合、一緒に攻撃はしないにしても、中立的立場あるいは中国に好意的な立場を示しながら、日本に領土問題で譲歩を求める可能性があります。日本でも同様の事態がありました。幕末の薩長同盟です。一時は会津と組んで長州を追い払ったのに、一転長期的展望から薩摩は長州と結びました。ついこの前のことです。(昭和・大正・明治・・三代前のことです。)

 日本でも昨日の敵は今日の友だったのです。台湾についても中国は合従に取り組んでいます。ここでも台湾経済は中国経済に強く結び付けられています。対日感情は良いのですが、血は水より濃いということもあります。

 次によく日本は中国に対抗するために遠交近攻策をとるべきだと言う主張を聞きます。近攻は対中国・韓国・ロシア強硬策でしょう。保守派のサイトやブログではよくそのような主張を見ます。問題は遠交です。インドやオーストラリアは遠すぎます。インドは今国内問題をいろいろ抱えていて、とても対中国で日本と同盟するのは無理です。

 中国そうならないようにインドへの牽制策としてパキスタンに合従政策を実行しています。パキスタン国内で反米意識が高まれば、中国にとってはもっけの幸いです。となると最大の連衡先はASEAN諸国ということになるでしょう。ここなら遠交近攻のまさにうってつけの地域です。

 ところが、今日のJBプレスでも書かれていたように、すでに中国の合従策が動いています。ASEANの会議でベトナムやフイリッピンなどが、南シナ海での中国の動きを非難しようとしたのですが、議長国のカンボジアが反対して声明をだせなかったのです。

 これはおじさんにとっても意外でした。ASEAN諸国は反中国でまとまっていると思ったのです。それに共同声明を出してもそれほどの効果はないのに、それすら出せないほど中国の影響力がASEAN諸国に及んでいると言うことでしょう。

 今日のJBプレスの記事の発信元は世界的に権威のある「the economist 」なのです。題は「中国を巡りASEANに亀裂」です。記事によれば、ASEAN内部でも海洋に面した「フイリッピン・ベトナム・マレーシア・シンガポール」と内陸の「タイ・カンボジア・ラオス」などと対中国政策で違いが出たというのです。

 カンボジアラオスは中国から大規模な援助を受けているので当然です。ミャンマーなども中国寄りです。タイは意外に思うかもしれませんが、中国にいる時中国のニュース番組ではタイのことが多く報道されていました。実は中国にはタイ族の人も住んでいるのです。

 また、以前から中国とタイは共同で特殊部隊の訓練などをやっています。日本ではほとんど知られていない事実です。おじさんも中国に行って初めて知りました。中国西南部では泰米(タイ米)は中国産のコメより高いのです。

 さて長くなりましたが整理するとこうなります。中国と合従している諸国は「北朝鮮カンボジアラオスミャンマーパキスタン」です。また、合従はしていないが、中国寄りなのがロシアです。中国も嫌いだがそれ以上に日本が嫌いなのが韓国です。また、親日であるが、血のつながりや経済的なつながりから全面的に連衡できないのが台湾です。タイも地理的・民族的な問題があって、親日ですが対中国連衡政策には加われないと思います。

 対中国連衡政策に協力できるのは、フイリッピン・インドネシア・マレーシア・シンガポールでしょう。(ブルネイとかもありますが)オーストラリアは親日でしょうが、貿易相手国としての中国の存在も大きいので、対中国連衡政策には加われないと思います。インドは加わったとしても、文化的な問題(カースト制度ヒンズー教)や日本と離れすぎている点で余りよい働きはできないでしょう。

 外交政策で保守派の人はASEANやオーストラリア、インドと連衡せよと主張しますが、細かく考えていけば、実は日本の外交政策で取れる幅は極めて狭いのです。遠交近攻も良いけれど、一番肝心なのは対米国との協調関係です。

 これがうまくいかないと全ては終わりです。現代の中国と正面から戦えるのはアメリカだけです。対米追従外交などと言いますが、上記の日本を取り巻く国際環境を考える時、アメリカとの緊密な関係を保つしかないと思います。仮に日本が自主防衛をしても、日本取り巻く合従連衡の枠は少しも変わりません。

 そうなれば韓国・ロシアが完全に日本から離れ、台湾も日本と距離を置くと思います。まさか日本が核兵器をもったら台湾は中国と対決できると思って日本に接近するなどと思ってはなりません。台湾と中国の距離は日本と中国の距離よりはるかに近いのです。

 以上書いたことは、外交専門家には常識的なことでしょうが、最近のブログやサイトの書き込みを見て、日本の置かれているアジアにおける国際環境を整理してみようと思って書きました。

 明日は夕方から大学開放講座(「決算書の見方」)に行きます。