新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

外交の手本としての日露戦争

今日も朝から晴天です。まあ今月いっぱいは夏日でしょう。政治は相変わらず混迷状態です。総選挙の日程が色々うわさされていますが、どうなることでしょう。

 株価は取りあえず少し上がりましたが、世界の経済情勢が今のままならどうしようのないでしょう。せめて増税法案だけでも片づけておかないと、後で大変なことになると思います。

 残りの原発再稼働を含むこれからのエネルギー政策や山積みする外交問題、TPP加入問題、社会保障制度問題、財政赤字問題などは、次の政権に任せるしかないでしょう。と言ってもこれだけ国論が分裂している中で、以前にも書いたように、一刀両断で解決できる政権はないと思います。

 さて、昨日拉致被害者の会の方が、北朝鮮との交渉再開を求めてコメントを出していました。拉致問題も一時は大きくマスコミに取り上げられたのですが、今は原発問題一色です。北朝鮮問題で、全てのカードを切ってしまった日本政府はどのようなカードを切って交渉を再開するのでしょうか。(かっては日本が強硬な姿勢にでれば、北朝鮮が折れてくると言われたものです。)

 ところで、日本の外交はダメだと言われますが、おじさんが見ても見事に成功したのは日露戦争をめぐる外交交渉だと思います。まず、日露戦争を始める前に日英同盟を結んだのがすばらしいです。当時世界最強の国である英国と同盟を結べたのです。

 もちろん英国にとっても、日本と結んでロシアの力を削ごうとすることはとても意味があったと思います。この同盟がなければバルチック艦隊の動静も分からないし、スエズ運河を使えなかったため喜望峰を回って大変な苦労をし乗り組み員の不満が爆発することもなかったでしょう。

 また、外債募集に成功したことも大きいです。お金を出してくれるということは、日本を信頼してくれると言うことです。当時ヨーロッパで東洋の小国が信頼を得ることは大変だったと思います。しかし、血のにじむような努力をして、お金を集めたのです。同時にヨーロッパ各地で日本への支持を集めることができたと思います。今風に言えば国際世論を味方につけたということです。

 次に戦争終結の準備を早くからしていた点です。戦争は始めるのは簡単ですが、やめるのはとても難しいです。勝っている時は、さらに勝てると思ってやめられません。負けていると、このままでは何のために戦争したのか分からなくなるので、ずるずる勝利するまでやめません。

 日本の場合は日本海海戦をきっかけに、大陸で勝利していたのにやめました。もちろん、軍も政府もこれ以上戦う体力が日本にないことを知っていたのです。ただそれを国民に知らせるわけにはいきません。現代日本なら全ての情報を公開せよと言われるところでしょう。また、政府には戦争終結の理由を国民に説明する政治的責任があると言われるところでしょう。

 政府が全ての情報を公開すれば、ロシアは絶対に戦いをやめなかったでしょう。その代り情報を知らされたなかった国民は大勝利の後の代償の少なさに激怒します。もし現在のような何でも民意を問えという時代なら、戦争終結はできなかったでしょう。

 野党は、猛然と政府を攻撃し、与党内部でも事情を知らない人は反対したでしょう。当時の国民に世論調査をしたら、戦争終結反対あるいはポーツマス条約反対が90%を超えたでしょう。事実反原発官邸前デモのような平和的なものでなく、日比谷公園で行われた条約反対大会は暴徒化します。

 日比谷焼き討ち事件として歴史の教科書にでています。条約締結の責任者の小村寿太郎は、今大きな声援を受けて出発しているが、帰国時は死を覚悟しなければならないだろうと言ったと伝えられます。

 今中国と尖閣諸島をめぐって軍事衝突も辞さないという動きがありますが、日露戦争時のような準備はできているのでしょうか。日英同盟に代わる日米安保条約でさえ破棄しろという意見があります。衝突が偶発的に起こったとして、それを仲裁してくれる国があるのでしょうか。もし、仲裁をアメリカに求めるならば、当然のこととしてアメリカから反対給付を求められるでしょう。国連に仲裁を求めるのは無理です。(中国が常任理事国なので拒否権を使うでしょう。)

 軍事衝突が起こったとして、その後日本経済にどのような影響があるのか、もし影響があるとしてどのような対策が取れるのか、そこまで考えているのでしょうか。(円や株価、国債の下落、日中貿易の停止)また、困難な外交交渉を命がけで遂行する政治家や外交担当者はいるのでしょうか。

 日露戦争時の政府・軍の指導者は若い頃に幕末の動乱や戊辰戦争西南戦争と言った大きな危機を体験した中で政治的判断をしました。中国で言えば共産党の指導者たちは大変な政治闘争を勝ち抜いて今の地位にたどりついています。日本で第三極の政治グループが政権をとるとも言われています。

 政治闘争の経験も政治指導の経験もなく風頼みで選ばれた政治家が、弱肉強食の国際政治の真っただ中に放り出されて大丈夫なのだろうかと思います。過激なブログのコメントを見ても、本当にその通りやってよいのかと思います。

 明日は講座があります。