新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

ノマド的ワーカーの光と影

今日は近畿地方は大変な大雨だったようです。おじさんの地方も昨日から雨が降ったりやんだりです。8月なのに夏日が最近めっきり減りました。おじさんとしては、このまま秋になってほしいところです。

 今日娘と孫が自分の家に帰ったので一息ついています。近くに住む長兄の家に両親を祀る仏壇があるので、お参りに行ってきました。キリスト者と言えでも、日本の風習を無視するわけにも行かないのです。まあ、亡くなった両親もそれで喜んでくれるならいいかと思っています。

 さて、このところノマドなどという働き方がはやっているようです。ブロゴスというサイトを見ると、このような組織からドロップアウトする働き方は名前を変えて繰り返し流行すると書いていありました。

 そう言えば随分前には「脱サラ」という言葉が流行し、次は「フリーター」という言葉、そして最近では「ノマド」です。簡単に言えば組織に縛られないで自由に働くということのようです。「ノマド」の場合働く場所が自由という点にあるようです。そこで「脱サラ」「フリーター」「ノマド」などの組織に縛られない働き手を総称して「ノマド的ワーカー」とよぶことにしました。

 これまであった、どの呼び方でもよいのですが、組織に縛られない生き方は確かにあこがれだと思います。勤務時間に縛られ、いやな上司に縛られ、わけのわからないことを言う後輩や部下に縛られないで自由に自分の力を発揮しながら生きていけたらどんなに楽しいだろうと思います。

 定年後、自営業に近い生き方をしてきたおじさんには良く分かります。中国の大学の場合で言えば、週3日教えるだけで、衣食住が保障されました。(一番お金のかかる住は無料。大学構内の2LDKのマンションで、おまけに家具完備、テレビ、全室エアコン装備)

 今は週1日だけ働いて後はのんびり過ごせます。一番ありがたいのは、面倒な人間関係が中国でも現在の仕事でもないことです。他人に気を使ったり、頭を下げたりする必要はありません。

 ノマド的ワーカーもそのような生活を願っているのでしょう。ただ以上書いてきた生活は光の部分です。物事には光があれば影もあるのです。おじさんの場合は、ノマド的生活を支えているのは、年金です。

 年金などないノマド的ワーカーの場合、生活費をどのように確保するのかという問題があります。何もしなくても向こうから仕事が舞い込んでくることは極めて困難です。お金を稼ぐということは、仕事があって始めて成り立つのです。仕事というのは相手があってのことです。

 まず何とかして仕事を手に入れなければなりません。組織にいれば、仕事は組織が探して与えてくれます。仮に仕事がなくても、組織が給料を払ってくれます。ノマド的ワーカーの場合、自分で仕事を探さなければならないし、みつからなかったり、仕事を打ち切られたらそれでお終いです。

 さらにノマド的ワーカーにとって恐ろしいのは病気やけがです。組織にいる場合、怪我や病気で休んでも休業補償があります。しかし、ノマド的ワーカーにはそのようなものはありません。おまけに怪我や病気で今ある仕事を断ると、次の仕事が来なくなる可能性があります。

 自分の病気やけがだけではありません。家族が病気やけがをしても、休むことができません。ノマド的ワーカーには有給休暇などないのです。また、老後の問題もあります。年金生活を始めて分かったのは、年金のありがたさです。

 働いている時は、給料が毎月自動的に振り込まれます。おまけにボーナスも出ます。現在は2月に1回それも現役の時の年収の3分の1くらいです。それでも、この年金がなかったら、退職金など10年でなくなってしまうでしょう。

 おじさんの場合、大学卒業後38年間働いても一月の年金は新入社員の初任給以下です。おじさんの年収から考えて年金受給者の平均額はもっと低いと思います。おじさんの知り合いの大学の先生は、正規の大学教員になるのが遅かったので、年金は18万円くらいだと言っていました。国民年金だけだと確か7万円くらいです。ノマド的ワーカーの場合、自分で個人年金を用意しなければ老後の生活は成り立ちません。

 つまり毎月死ぬまで10万円程度の不足分を個人年金とし準備しなければ、老後は悲惨なものになります。毎月10万円ということは年間120万円、60歳で引退し80歳まで生きたとしたら2400万円用意しなければならないのです。これは生活費だけです。

 自動車を買い替えたり、自宅あるいはマンションなどの補修費の負担があります。また耐久消費財(テレビ・冷蔵庫など)の買い替えが10年ごとくらいにあります。

 組織内労働者の場合、年金でとりあえず生活費をまかない、退職金などで住まいの補修費や耐久消費財購入を行えます。ノマド的ワーカーは、毎月元気で仕事が十分あり、かつその仕事単価が生活費だけでなく、老後の蓄え程度まででる価格でなければなりません。

 30代でノマド的ワーカーになって60代で引退するとしたら、30年間前述の条件(健康・十分な仕事量・十分な仕事単価)を満たし続けなれけばなりません。

 企業は永遠でないし、10年後にどうなるか分かりませんが、どうもリスクはノマド的ワーカーの方が大きいような気がします。人生60年の時代だったら、太く短く生きるノマド的ワーカーも成り立ったのですが、人生80年の時代だとそれも難しい気がします。

 明日は期末試験の問題作成準備をします。