新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

東アジア軍拡競争の果て

今日は台風接近ということで大雨を覚悟したのですが、それほど雨が降りませんでした。台風が逸れたのかもしれません。今日は保育園に行っている孫の運動会でした。大きな団地を抱える地区なので、保育園の園児も大勢します。今5歳でかわいい盛りです。

 さて、今回の自民党総裁選挙で、防衛力強化論者の石破さんと安倍さんが総裁、幹事長に選出されました。そうなると次期政権を担当することは間違いないので、防衛力強化が大きな政治課題になるでしょう。

 ところで、日本の防衛政策の基本は戦後一貫して専守防衛です。簡単に言えば外国が攻めてきた時、ある程度時間を稼いで、本格的な反撃はアメリカ軍にお願いするというものです。それによって大幅な防衛費の削減が可能になり、その分経済成長に貢献しました。

 最近の自主防衛論は、そのアメリカ依存からの脱却を目指すものです。簡単に言えばアメリカの力を借りずに自力で戦えるようにしたいと言うものでしょう。専守防衛を基本にしたのは、冷戦のせいです。米ソ対立それも大規模核戦争を前提にした戦略では日本の出る幕はありませんでした。

 ところが、冷戦崩壊後、ロシアが日本に攻めてくる可能性はなくなりました。それに代わって中国がこの10年急速に発展してきました。GDPではすでに世界2位になりました。韓国や北朝鮮が攻めてくることは考えられません。ゲリラ的な攻撃を仕掛けるかもしれないという意見もありますが、軍事行動が政治意思のための手段だとすると、日本にゲリラ攻撃を仕掛けても、何の政治的効果はありません。

 ところで、タイトルについてです。今日本が世界に向かってこれから軍事力を強化する、簡単に言えば軍備拡大(軍拡)を行うと宣言したとするとどうなるでしょう。そもそも軍備拡大というのは、一朝一夕にできることではありません。どこの国でも長期的な観点から軍備の整備計画を立てます。

 それに合わせて、艦船を建造し、戦車や航空機を購入したり、開発を進めます。その際、国の長期防衛計画にのっとって行うのです。ですから、急に軍備を拡大すると言っても簡単にはいかないのです。日本の場合、航空機などはほとんどアメリカからの輸入に頼っています。自主開発はまず無理でしょう。

 問題は、日本が軍備を拡大すると主張した後のことです。軍事バランスという言葉があります。ある国が突然軍備を拡大すると、近隣諸国の軍事力は相対的に低下することになります。現在、日本の軍事力が韓国や中国に比べて弱体化していると言うのが保守派の人の意見です。

 だから、日本の軍事力が拡大すれば東アジアにおいて発言力が増加するというのでしょう。簡単に言えば、航空母艦爆撃機やさらに核兵器を持てば、中国や韓国に対して強い姿勢で臨めるというのでしょう。

 問題は、それは日本側の論理だということです。それでは中国は韓国の立場はどうなるのでしょう。日本が軍備をどんどん拡大しているのを黙って見ているののでしょうか。自国の軍事力が相対的に低下するのを黙って両国の政治指導者や軍指導者が見過ごすことはありえません。

 日本の軍備が拡大し、自国の軍事力が相対的に低下し影響力が低下すると考えるなら、当然自国の軍事力の増大を目指すでしょう。それに、両国政府が、日本は過去の歴史の反省もなく軍備拡大に走っている、このままでは、過去のように植民地化(韓国の場合)されたり、占領下におかれる(中国)と主張したら、国民はそのとおりだと思うでしょう。

 中国にいた時建国60年の軍事パレードを見て、学生さんたちは感動していました。普段共産党に反感を持っている学生さんもです。今格差や共産党の在り方に不満を持っている人たちも、先述した説明には何の反対もなく受け入れるでしょう。それに、日本が軍備を拡大しているのは事実だからです。

 こうして、韓国も中国も今以上に軍拡に励むでしょう。後はかっての米ソの軍備拡大戦争のような状態になるでしょう。アメリカとしても、どうしようもありません。せいぜい日本や韓国に提供する航空機の性能を落としたり、売却を制限するくらいでしょう。

 そして、軍拡競争がエスカレートした先には何が待っているでしょう。仮に日本が今すぐ核開発を始めても、実戦配備までには5年はかかるはずです。通常兵器での軍拡も同様でしょう。兵器は購入できても、弾薬を集積しなければなりません。今は公表されていませんが、1週間の戦闘しかできないレベルだと言うのが、常識です。

 兵員の増強も簡単ではありません。徴兵制を敷いても兵士が現代の高度な軍事技術を身につけるのには相当な時間がかかります。陸上兵力を増強しても中国に攻め込むわけにはいきません。海上戦力や航空戦力を向上させるのは、さらに時間がかかります。

 さて、はてしない軍拡の先はなんでしょう。戦争ではありません。どこの国の政治指導者も今日中・日韓が戦争すれば、経済は衰退し社会が疲弊することを知っています。個別に見れば日本が軍拡で一番困ることになるでしょう。なぜなら、中国は韓国はすでに十分すぎる兵力を持っています。それに韓国の場合は徴兵制で人件費が安いです。中国の場合230万人も兵力があるので、これ以上増やす必要はありません。

 日本の場合が一番負担が重くなるでしょう。日本人の中には中国の方が負担に耐えられず崩壊すると言う意見もあります。事実、米ソ軍拡競争ではソ連が崩壊することで終わりました。中国がもし軍拡のため国が崩壊したらどうなるでしょうか。日本人の中には溜飲を下げる人もいるかもしれませんが、ソ連の崩壊と違って中国の崩壊は東アジア全体を危機に陥れます。

 まず中国が崩壊すれば北朝鮮も崩壊するでしょう。北朝鮮が崩壊すれば、膨大な数の難民が中国や韓国になだれ込むでしょう。また、日本にも大勢に入ってきます。日中韓の三国の経済は緊密に連携しているので、大打撃を受けます。米ソは経済的な連携は当時ありませんでした。ですからソ連が崩壊してもアメリカの経済に大きな影響がなかったのです。

 日本の軍備拡大を主張する場合、よくそのことを考えておく必要があります。間違いなく言えることは、軍備拡大で、現在の領土問題が解決することはないと言うことです。やはり外交努力によるしかないでしょう。

 明日は近隣の教会の長老役員の研修会があります。