新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

ユニクロ「世界同一賃金」の波紋

  今日は一日中曇り空でした。夕方から雨の予想です。株価は一段落です。以前から言われているように、アメリカ・中国・ヨーロッパの景気が低迷しているので、日本の輸出は伸びないでしょう。

 それに日本だけが成長を期待できるのですから、ドル買いでなく円買いになるのは当然でしょう。景気が低迷するかもしれない国の通貨を買うのは変ですから。対ドルで100円を上回ることはちょっと難しそうです。何かのきっかけで円高に振れるかもしれません。

 そうなればアベノミックスも見込み違いということになるでしょう。円高になれば一気に株安になり、山高ければ谷深しの相場の格言通り日経平均1万円台割れということもあります。それでおじさんも利益の出ている株をどの時点で処分すべきか迷っています。

 さて今日は朝日新聞の一面トップの記事からです。ブラック企業と名指しされているユニクロがとうとう世界同一賃金を打ち出しました。特に上位層については完全同一賃金で、上級管理職クラスは実質同一賃金になるようです。

 どこが驚きかと言うと、新興国の管理職クラスには相当な賃金値上げということになります。賃金は国の物価水準によって違います。もし、日本と同じ賃金にしたら、新興国では社長クラスの賃金になります。記事でも中国の店長が月給6千元(約九万円)でこれでも地域の法定最低賃金の5倍で中国では高給だと書いてありました。

 日本で月給9万円で働けと言われたら誰も来ないと思います。日本の高卒初任給でも15万円くらいでしょう。中国で15万円(1万元)などという月給を貰っている人は大学で言えば学長クラスです。

 この話を読んで懐かしくなりました。おじさんの中国の大学での月給がまさに六千四百元だったのです。外国人でさえそんなものです。それをもし日本並みの月給20万円とか30万円にしたら優秀な人材がいくらでも集まるでしょう。

 それにどんなにつらい労働でも我慢します。日本と中国では物価水準から言えば1元が80円くらいの感覚です。ですから20万円というのは中国では日本でいう月給160万円の感覚です。ブラック企業と呼ばれても月給160万円とか200万円となればどんな無理でも聞くでしょう。

 中国人のある部分の層は我慢強いし学力も優秀で、学生さんによっては、英語・日本語・中国語もOKという人がぞろぞろいます。そんな人と競争するとなるとよほど頑張らなければ日本人は負けます。のんびり行こうとか自分らしい仕事を見つけたいとか自己実現を目指すとか言っている学生さんはあっと言う間に負けてしまうでしょう。

 中国の話ばかりで申し訳ありませんが、欧米でも同じだと思います。原則として日本以外の世界の企業は終身雇用ではありません。能力を買ってもらうという仕組みです。20年以上前大学で行政法を聴講した際、警察法について学びました。

 その関係で世界の警察制度の本を読みました。驚いたことにほとんどの国でランク別採用をしています。日本のような昇任試験はありません。巡査級・警部級などというキャリア制度に似た採用試験があって、合格した試験のランクで出世も給与も決まるようでした。

 定期昇給のようなものもありません。昇給するためには上位のランクになるしかないのです。中国いる時でもそうでした。同じ日本人の教師でも全く昇給しない人もいました。(おじさんは運よく昇給できました。)先生同士でも今年一番優秀教員は誰ですかというアンケートに基づいて報奨金が出ていました。(額は少ないですが)

 スーパーや病院、企業ではしばしば今週のスターとか五つ星とか言って堂々と写真入りで張り出していました。空港の出入国管理官や銀行(中国銀行)の窓口でも応対が良いとボタンを押すシステムがありました。

 温情主義は日本だけかもしれません。今「海賊とよばれた男」(講談社)を読んでいます。ここには世界の流れと全く逆の家族経営を貫いた企業家が描かれています。モデルは出光興産の創始者だと思います。このような経営者を理想とするのは日本だけでしょう。

 なぜなら他民族国家では言わなくても心が通じるなどということはないからです。もちろんどこの国でも誠意は通じます。しかし、経営となるとそうはいかないでしょう。確かに日本にいる限りは空気を読まなければならないし、以心伝心が可能です。

 しかし、グローバル化していく世界の中で日本的特殊性の社会がいつまで続くか疑問です。おじさんも中国へ行かなければ、この日本的特殊性の社会しか知らなかったでしょう。中国での体験はまさに目からうろこが落ちるものでした。
 
 60歳を過ぎてそのような体験ができて幸せです。ただおじさんも古き良き時代の日本人なので、強烈な競争社会には生きていたくありません。古き良き時代を生きて良かったと思います。これが若者であったら大変だったでしょう。御若い方たちに同情します。

 明日は雨なら授業です。雨が降らなかったら遠足です。