新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

イスカリオテのシモンの子ユダのこと

今日は暑いくらいの天気でした。午前中は礼拝、午後は長老会(役員会)がありました。それでとても忙しかったです。世の中は動いていきますが、教会の礼拝は変わりません。それにプロテスタント教会の場合、中国でも日本でも礼拝の内容は同じです。

 昨日憲法問題について書いたのですが、当然改正賛成派と改正反対派の方のコメントがありました。これが日本の現状なのでしょう。このブログは別に案を出すものでも議論する場でもないので、昨日で憲法問題は終わりです。

 今日は日曜日ですので、教会ネタです。今日も聖書ネタです。今ヨハネ福音書を逐次礼拝説教で取り上げています。今は最後の晩餐として知られた箇所です。そしていよいよユダがキリストを裏切る場面です。ヨハネ福音書は他の3つの福音書と違います。

 とても文学的だと思います。イスカリオテのユダの裏切りの場面はヨハネ福音書13章21節~30節が一番詳しいです。そもそもユダと言う名前は普通にある名前です。イスカリオテのユダとよく言われますが、ヨハネ福音書ではイスカリオテのシモンの子ユダと言います。

 それから聖書学者の間では良く知られている通り、当時の晩餐の仕方は椅子に座って食事するのではありません。どうしても最後の晩餐と言えばダビンチの絵を想像してしまいます。それではどうするかと言えば寝そべって食事するのが普通です。

 ところで聖書ではイエスがこの中に裏切り者がいると言った時、一番弟子のペテロがイエスのそばにいた、イエスが一番愛している弟子に、それが誰か聞くように合図したとあります。この一番愛している弟子こそが、ヨハネ福音書を書いたヨハネなのです。

 聖書は次に、ユダにイエスは酢に浸したパンを与えるものが裏切り者であると言います。そして「パン切れを浸して取り、イスカリオテのシモンの子ユダにお与えになった。」とあります。実はイエスを挟んでヨハネの反対側に
いたのがユダだったのです。

 裏切り者がいるそれはあなただと指摘された時ユダはどう思ったでしょうか。聖書ではただ「ユダがパンを受け取ると、サタンが彼の中に入った。」とあります。まさに悪魔に魅入られたという言葉がありますが、まさにそれです。

 もちろん他の弟子にたちには何を言っているのか意味が分かりませんでした。そしてそれに続いて「しようとしていることを、今すぐ、しなさい。」とイエスは言われます。以前の聖書では「なすべきことをなせ。」とありました。

 ここまで来ても他の弟子たちには意味が不明です。聖書ではそのことを「座についていた者は誰も、なぜユダにこう言われたのか分からなかった。」と書いてあります。何か必要な品を買いに行きなさいと言ったと理解した弟子もいたとあります。

 注目すべきはユダは「金入れを預かっていた」からなのです。つまりユダは会計係だったのです。会計係に任命される人間は当然有能な人物です。それに理性的な人間だったのでしょう。弟子たちの間でも信頼されていたはずです。

 ユダが裏切ったのはお金をごまかしていたからだと説もあります。しかし、おじさんは違うと思います。イエスのグループのお金を少しくらい誤魔化してもたかが知れているでしょう。それよりユダは論理的で理性的な人間だからこそイエスを裏切ったのでしょう。

 簡単に言えば余りに頭が切れすぎたのです。彼はイエスが王に代わる存在になると信じていたのでしょう。もしそうなれば、自分は有力な地位につけると信じていたのでしょう。事実ラザロを生き返らせ、エルサレムに入場した時、人々は熱狂的にイエスを支持したのです。

 もし現代風に言えばイエスとその弟子たちがクーデターを企てたら成功したのかもしれません。確かムッソリニはローマ進軍を行い政権を掌握したと聞いています。弟子たちの中にもそんな考えの人もいたはずです。しかし、事態は一転します。

 イエスが逮捕されるという可能性も出てきたのです。優秀な会計係であったユダはすぐにどうすれば自分にとって一番有利か考えたのでしょう。またイエスに政権を掌握する気持ちがないことを知って心が離れたのかもしれません。

 いずれにしても彼はイエスを裏切ります。他の弟子たちもイエスを裏切って逃げて行きますが、ユダだけは戻って来ず自殺したと使徒言行録では述べられています。優秀な人間だありながら、信仰を持つことができず最後に自殺してしまうユダはまさに現代人の象徴かもしれません。最後にユダが外に出た時「すぐに出て行った。夜であった」とあります。

 戸をあけたユダを待っていたのは夜の闇だったというのです。英語では「it was dark」とありました。夜を表すナイトではなく闇を表すダークが使われているのがとても印象的です。ユダはこの後闇の世界を生きなければならなかったのです。

 キリスト教に関心のない人であってもユダの名前くらいは知っているでしょう。聖書最大の悪役として後世その名を残したのです。明日はのんびり過ごします。