新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

中国の軍事力拡大と海洋進出についてー論語の言葉から考える

今日はとても暑い一日でした。所用があっておじさんの街一番の繁華街に出かけました。繁華街は駐車場がないので、バスで行きました。バスに乗って中国のバスとの比較を書こうかと思ったのですが、昨日買った本を読んでいて考えが変わりました。

 昨日買ったのは「戦略論の名著」(中公新書)です。編著者は1991年「失敗の本質」という名著を書いた野中郁次郎氏です。「失敗の本質」は20版に及んでいます。多分まだまだ出版されていると思います。ちなみに20版というのは20回刷り直したという意味です。(刷った本の在庫がなくなると刷り直すのです。)

 失敗とは旧日本軍における失敗です。日本軍の失敗は組織文化の問題であったとこの本は論じています。軍隊も企業や役所、学校などと同じ日本の組織文化のもとに作られているのです。ですから日本軍が失敗した現象は当然現代の日本の企業や役所、学校と言った組織でも起こりうるのです。

 「失敗の本質」という本が「ダイヤモンド社」から出版されたのもそういう理由があるのです。日本軍の失敗などと言うと保守派の読者はきっと左翼の学者が書いたものだと思われるかもしれませんが、著者は当時現役の防衛大学校の教官だったのです。

 ぜひこのブログの読者の方も御読みになることをお勧めします。ところで毛沢東と言うと文化大革命を指導し、保守派の人からは蛇蝎のごとく嫌われた独裁者と思われがちです。そのような面があったのは事実ですが、今回読んでいる本では、彼の「遊撃戦論」を取り上げています。

 前述したように、防大の教官(現在は退官)の書いたもので、名著と言われるものですから、毛沢東の戦略家としての地位は高いものです。ちなみに日本人としては石原莞爾の「戦争史大観」がでています。

 尖閣列島問題や空母部隊の編成など中国の軍事力拡大が大きくマスコミに取り上げられています。日本の人は何だか突然中国が軍事力を拡大し、日本の脅威になったように御思いでしょう。しかし、はるか以前から中国の軍事力強化また海洋進出は警告されていたのです。

 ところで今日のサブタイトルの論語の言葉とは「遠慮」という言葉なのです。そのまま書くと誤解されるので、論語の言葉としました。「遠慮」のもとの言葉は「遠き慮りなければ、近い憂いあり」です。訳すと「将来を見通す考えがなければ、間近になって困ったことになる」という意味です。

 今中国の軍事力強化や海洋進出に関する本があります。「中国の海洋戦略」「中国軍現代化と国防経済」などです。「中国の海洋戦略」という本の帯には「中国の大陸周辺海域、特に尖閣諸島、南沙、西沙諸島への積極的な進出は何を意味するのか。その現状を指摘」

 尖閣諸島は御存じの現状です。南沙、西沙諸島フィリッピンベトナムとの領土紛争なのです。新聞には良く登場します。と書くと最近の本だと御思いでしょう。実はこの本は1993年今から20年前に出版されているのです。おじさんが持っているくらいですから、当時の海上自衛隊の幹部や防衛庁(当時)の幹部は皆読んだはずです。

 最近やたら尖閣列島の話や中国の海洋進出の話が日本の脅威のように語られますが、20年前からそんなことは分かっていたのです。中国の軍事力がアメリカやロシア(ソ連)にとって脅威となることも1985年当時から分かっていました。

 「中国の国防とソ連・米国」と言う本です。この28年前に出版され、本の帯には将来の姿が見事に予言されています。「中ソ関係・米中軍事関係、ソ連海軍と中国海軍と言った三つの重要な問題に関して、具体的な事例から考察を行う。」とあります。

 中国の軍事費増大の問題、また軍事強国となった中国にODA援助を行う問題点についても2000年つまり13年前から指摘されていたのです。ご存じのように民主党が政権を取ったのはつい4年前のことです。ここで指摘されている中国の軍事力強化また海洋進出の問題はすでに自民党政権の時代から分かっていたことなのです。

 しかし、遠い将来に対して何の慮り(「おもんばかり」と読みます。深い考えの意味です。)もなく、今頃尖閣列島で中国の海洋勢力と対峙することになったのです。民主党時代の尖閣列島国有化を問題にする保守派の人が多いのですが、原発問題同様、すでに早くは20年前から危惧されていたのです。

 ブログのコメントなどを見るとヘイトスピーチに近い意見が多いです。そのようなヘイトスピーチに近い意見を書く方こそ、「戦略論の名著」を読むのをお勧めします。最後に中国の軍事力強化と海洋進出に関する過去の書籍の名前と発行年を書いておきます。もちろんおじさんは全て読みました。昔から軍事オタクそれも中国の軍事問題に関心があったのです。明日は教会です。

 「中国の国防とソ連・中国 」 平松茂雄著 勁草書房 1985年
 「中国と朝鮮戦争」 同上 1988年
 「鄧小平の軍事改革」 同上 1989年
 「蘇る中国海軍」 同上 1991年
 「中国の海洋戦略」 同上 1993年
 「中国軍現代化と国防経済」  同上 2000年