新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

ソロモンの栄華とその後ー何を学ぶのか

今日も暑い1日でした。余りに暑いので自動車のクーラーを入れました。今日は日曜日なので教会です。教会では礼拝後壮年会がありました。壮年会のメンバーは50代60代70代の方々です。

 壮年会では旧約聖書の概説書を読んでいます。今日はソロモンの栄華とその後について学びました。読んで思った印象はまさに日本の現状そっくりだと言うことです。そこで今日はこれについて書きます。

 ソロモンの栄華には前段があります。そもそもイスラエルは長い間王がいませんでした。しかし、近隣諸国は皆有力な王によって率いられているのを見て、イスラエルも王を戴くことにしたのです。それがサウル王でした。サウル王の時代、イスラエルは近隣諸国の侵略を繰り返し受けていました。

 強敵はペリシテ人でした。サムエル記上にはサウル王とペリシテ人との戦いが描かれています。有名なダビデゴリアテの話はこのペリシテ人との戦いなのです。その後サウル王は死に、ダビデが後を継ぎます。ダビデの活躍でイスラエルは安定した王国を築きます。

 次がソロモン王の栄華です。ソロモン王の栄華はいくつかの好条件が重なった結果です。一番大きな理由は近隣の大国が衰退したことです。イスラエルのような小国はいつも近隣の大国の侵略を受けていました。近隣諸国が衰退する中で相対的にイスラエルの地位が向上しました。

 そこにソロモンという聡明な王が現れたのです。かれは富国強兵に力を注ぎ栄華と繁栄の時代を築きます。そこまでは良く知られている通りです。問題は其の聡明な王たちが皆死んだ後なのです。サウルが道を開き、ダビデが完成させ、ソロモンが頂点へと導いたのです。

 ところがソロモンの時代に様々な問題が蓄積していたのです。栄華と繁栄の陰には現代と同じ国民の重い負担と格差社会がありました。また社会全体が弛緩(ゆるむ)してしまっていたのです。先代や先々代の苦労は忘れられいきます。現在の繁栄が偶然の結果であり、近隣諸国が復活してくればあっと言う間にその繁栄が脅かされることを知りませんでした。

 ソロモンの死後、その矛盾は一気に噴き出します。ソロモンの死後、民は新しい王(ソロモンの息子さん)に「あなたの父上はわたしたちに過酷なくびき負わせました。あなたの父上が私たちに課した過酷な労働と重いくびきを軽くしてください。そうすれば私たちはあなたにお仕えいたします。」(列王記下10章)と言いました。

 ソロモンの栄華の影には重い負担と大変な労働があったのです。ソロモン王の時代には王が余りに優秀であったため言えなかったのです。ソロモン王の死後その息子さんに訴えたのです。さて息子さんはどうしたでしょうか。

 自分で判断できない時は当然部下に意見を求めます。ソロモン王に仕えた長老たちは「もしあなたがこの民に優しい態度を示し優しい言葉をかけるなら、彼等はいつまでもあなたに仕えるはずです。」と答えます。ところが息子さんは其の意見に不満で、自分と共に育ち、自分に仕えている若者たちに相談します。

 「父がお前たちに重いくびきを負わせたのだから、私はさらにそれを重くする。父がお前たちを鞭で懲らしめたのだから、私はさそりで懲らしめる」と言いなさいと自分に仕える若者たちは答えます。息子さんはそちらの意見を取り上げるのです。そうして、結局イスラエルの民は「ダビデの家(ダビデ王朝)に背き今日に至る」結果になるのです。

 イスラエルは南北に分裂し、隣国のエジプトが攻めてきます。最後にはバビロニアに滅ぼされ、有名なバビロン捕囚の憂き目にあうのです。ここから学べるのは、現在の繁栄は偶然の結果だと言うことです。繁栄の真っ最中にあっても驕り高ぶってはいけないということです。

 翻って現在の日本の繁栄は偶然の結果です。敗戦で全てを失ったのに、たまたま朝鮮で戦争が勃発して立ち直ることができました。アジアの宿敵中国もアヘン戦争以来国は疲弊したままでした。アメリカもソ連との冷戦のために日本を助けます。ソ連も崩壊し分裂します。

 さらに国民ががんばって努力し勉強したので世界の先頭を切る技術大国経済大国になりました。しかし、ソロモンの時代同様格差が広がります。その時国を治めた息子さんは自分のお友達を重視します。そう言えば以前お友達内閣で恥をかいた首相がいましたね。

 自信過剰は危険です。謙虚に自らを反省し、民の重い負担を軽くし格差が少しでも是正されるようにしなければ結局は敗北します。ソロモンの時代近隣の大国が衰退していたので、その息子さんたちも近隣の大国を軽くみるようになりました。

 現在の中国と日本の関係にも似ています。アヘン戦争以来200年近く衰退していた中国が再び大国へと変身しています。エジプトが衰微していた時代、ソロモンたちはエジプト何するものぞと言う気構えだったのでしょう。

 それ故ソロモンの息子さんはエジプトと戦い敗れます。おまけに国も分裂してしまいます。栄華の陰には格差が存在し重い負担に苦しむ民がいます。現在の日本も格差を承認してそれをなくそうと努力をしません。ソロモンの栄華と王国の分裂の歴史は何か日本の将来を暗示しているような気がします。

 明日もいろいろ仕事をします。