新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

ヨセフさんの経済政策ー古代エジプトと現代日本との比較

今日は山陰地方は豪雨のようです。娘のお婿さんの実家が山陰地方なので心配です。娘のお舅さんのお家は裏山があります。地滑りなどということのないよう祈っています。

 それに比べておじさんの地方は雨が降りそうで降りません。雨はいやだけど降らないのも困ります。さて今日は日曜日なので恒例の教会ネタ(聖書ネタ)です。旧約聖書創世記に出てくるヨセフさんについて先週書きました。かれはエジプトで奴隷になりそこからエジプトの首相にまでなった人です。

 奴隷に売られた家では主席管理人になり、監獄でも管理を全面的に任されるほど優秀な人でした。外国人(イスラエル人)だったことを考えるとすごいことです。

 ところで先週は詳しく書きませんでしたが、ヨセフさんは何をしたのでしょうか。彼の政策は現代の日本の政策と比較するとおもしろいので今日はそれについて書きます。どこの国でも政治の根幹は経済です。経済政策に失敗すればどのような政権でも崩壊します。

 まずそもそも彼がなぜ政権を任されるようになったのかというところから書きます。ある時エジプトの王(ファラオ)は夢を見ます。それは、良く肥えた牛が七頭いたのに、後から痩せた牛が七頭でてきて肥えた牛を食い殺すのです。他の夢は実の入った七つの穂が出た後実の入っていない穂が七つでてきてそれを飲み込むと言う夢なのです。

 エジプトの人はだれもこの夢を読み解けなかったのですが、ヨセフさんはこれは七年豊作が続いた後七年不作が続くことですと読み解くのです。

 そこで王がヨセフさんに政策を問うと、七年間の豊作の間に国庫にその収穫の五分の一を保管するよう進言するのです。そしてこの予言は的中します。他の国は豊作の間にその作物を皆消費してしまいました。ところがエジプトだけがその時保管をしていて、そのあとに来た凶作に備えたのです。

 まずえらいのはファラオです。ヨセフさんの夢と解きを信じたことです。現代の日本では外国人に全く参政権を認めません。ました外国人を首相にするなど思いもつかないことです。ファラオは奴隷の出身であれ外国人であれ有能な人を登用したのです。

 今風に言えばグローバルな考えの持ち主だったのです。もちろんどこの国でもファラオの考えに反対する人はいたでしょう。しかし、ファラオはそれを押し切ったのです。上に立つ人に見る目があれば国は栄えるのです。

 また豊作の7年間に備蓄をしたのもすごいと思います。現代でも財政問題はどこの国でも難しいです。成長戦力と財政規律は相反するのです。当時であれば7年間も豊作が続けばその収穫(収入)を元に戦争して領土を拡大した方が良いという意見もあったでしょう。

 生産力が低い時代、経済成長をするには戦争で他国を併合して領土を広げるのが一番です。しかし、7年間の豊作(現代風に言えば高度成長)の時代に低成長の時代が来ることを予想して備蓄したのです。バブルの後、日本は不況に苦しみました。

 あのバブルを一時的な経済成長だと認識して次に訪れる不況の時代に政府が備えていればよかったのです。しかし、バブルの時代、そんなことを考える人は誰もいませんでした。これがバブルだから浮かれずに財政基金として積み立てようという主張もなかったのです。

 残念ながら日本にはエジプトのファラオはいなかったのです。その後の具体的な政策は「ヨセフの政策」とサブタイトルがついて創世記47章13節以下にでています。

 簡単に言うとヨセフさんは、貧窮したエジプトの民から農地を買い上げたのです。国有化政策です。そして民は奴隷になりました。つまり政府の管理下に置かれたことになります。もし、政府が奴隷になった民を酷使するなら反乱がおきたでしょう。

 ヨセフさんはもちろんそんなことはしませんでした。民に国有化した畑を貸し与えタネも提供し、ここらか得る収穫の20%を税金としてファラオに払いなさい、他はあなたがたのものですと言ったのです。四公六民とか言いますが、ヨセフさんの政策は二公八民です。

 現在消費税が10%になろうとしています。それ以外に所得税が10%地方税自動車税・固定資産税その他の社会保障関係掛け金を入れたら、収入の30%は現在でも公租公課として消えるでしょう。それから比べると20%の税金は安いものです。

 ヨセフさんの経済政策は当時の農民にはありがたいものだったと思います。国有化には問題があるという人もいますが、もし国有化しなかったら一部のお金持ちの所有になったでしょう。つまり大地主が困窮した農民の土地を安く買占め、身売りした農民を奴隷(小作人)を使う形になったと思います。

 江戸時代や明治になっても凶作や農産物価格の下落時に大勢の農民が農地を手放し小作農になりました。また借金が払えないと娘を実売りしたりしました。古代エジプトでもヨセフさんの政策がなかったら同じことが起きたでしょう。

  当時としては破格の経済政策だったのでしょう。現代人のおじさんが見ても納得できるものです。ひるがえって新自由主義の日本はどうでしょう。官から民へがスローガンです。ヨセフさんのような有能な官僚はどの時代どの社会にもいると思います。

 しかし、そのような有能な官僚を見出し、その人に権限を与える指導者は少ないです。特に先入観を持たず公平に能力だけを見抜く指導者はもっと少ないです。もしファラオがヨセフさんは外国人(イスラエル人)である、そのような外国人はきっと高位につければ自国に有利なように働くと考えたら、この話のようにはならなかったでしょう。

 多分そのような理由から部下の中で反対する者もあったと思います。それを抑えてヨセフさんを首相にしたファラオこそが一番えらいと思います。

 外国人参政権あるいは在日外国人に対する反対・蔑視などを見るたびにこの話を思い出します。来週は不思議な人間の運命をモーセさんから学びます。

 明日もいろいろ忙しいです。