新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

民間出身校長の難しさー大阪市の事例から

今日も暑い一日でした。と言っても以前のような蒸し暑さはありません。どちらかと言えば、からりとした暑さです。ところで今日も相場は下落でした。

 一時300円近い下落で、もう一段の下落があれば12000円台突入と言ったところでした。株式相場に利益が直結する証券株の値段をみれば下落の衝撃がよくわかります。

 いつも書く証券業界のガリバー野村ホールデイングスの株価の場合、アベノミックスの資産バブルの頂点の時980円でした。そして今日とうとう700円を割って690円台に下落しました。3月で300円近くの下落です。5月までの相場の上昇が資産バブルであったことをよく象徴しています。

 バブルといっても小規模なもので、被害者はアベノミックスに乗せられて4月以降ににわか投資家になった人たちだけです。シリア問題から原油価格が上昇しているようです。これに円安が加わってまた貿易収支の赤字幅が広がるでしょう。

 さて今日はあるニュースを見てブログ書こうと思いました。それは大阪の民間人出身の校長がセクハラで訴えられた記事です。その前には同じ民間出身の校長が就任して数カ月で辞任した記事がありました。また民間出身の区長が解任されたニュースもありました。

 全国的に見ても民間出身者を校長に採用する動きは減りました。今回のケースを見ても民間出身者を校長にすることが難しくなるでしょう。大阪市では11人の校長を採用したのに1年も経過しないで2人に問題があったのです。民間人校長で2人といっても全体の2割ですからちょっと大変です。

 なぜそんなことになったのでしょう。公務員の仕事の仕方や内容と民間の仕事の仕方では違うことがあります。一番大きな点は公務員の仕事は縛りが多いのです。逆に言えば自由裁量の部分が極めて少ないです。それに法律や条例の他に、通達や規則・細則のような余り知られていない縛りや中には組織内部の内規(学校で言えば校内規定)・申し合わせ事項などがあるからです。

 また過去の事例を手本にすることが多いです。過去の上に現在があるということです。もちろん過去の事例を変えることも可能ですが、おもがけない部門にまで変更を連絡しないと大変なことになります。問題が起こってまさかあんな部門まで関係があるなんて知らなかったということになります。

 学校の場合でも、授業時間の変更をする場合、教師・生徒・保護者に連絡することはもちろんですが、事務関係者や食堂・売店の関係者にまで連絡しなければなりません。売店や食堂では昼食時間が変更になればそれに対応しなければならないからです。

 行政と違って学校の場合はさらに難しいです。地方自治体の場合、市民だけです。教育現場の場合、文部科学省、県教育員会、市町村教育委員会、生徒、保護者、地域社会など全てが相手です。民間企業で活動してきた人にとっては学校は本当に息苦しいものになると思います。

 企業の場合、身内以外はお客さんということになります。本社にいれば、それより上の組織はありません。直属の上司がOKを出せば大体なんでもできます。ところが学校の校長の場合直属の上司に相当する人がいないのです。

 教育委員会の場合、事務局に学校教育課などという組織があってそこには課長がいますが、たいした権限はありません。その上に学校教育部長などという人もいますが、せいぜい3年くらいで退職したり転勤したりします。

 県庁や市役所の別の部署から転勤してくる人も多いので学校のことが良く分からないこともあります。

 学校教育部長の上は教育次長あるいは教育長です。この人たちも自分で何かを決めたりはできません。議会があるからです。教育長は教育の専門家がなるとは限りません。結局誰かが何か大きな変化を起こそうとしても絶対的な決定権を持つ民間でいう社長のような人はいないのです。

 民間企業では社長が何かを決めれば全社で動きます。行政の場合ですと首長(知事や市町村長)の権限が強いです。銀行の場合でも支店長にかなりの権限があります。しかし、学校の場合校長が独自でできることは少ないのです。

 校長ができるのはせいぜい校内人事権くらいでしょう。(だれを主任主事にしたり、担任にするかなど)後は建物の管理権くらいです。義務制の学校の場合、カリキュラム(教育課程)や教科書なども自由に決めることができません。(高校の場合はかなり自由がききます。)ぜひほしい他校の教師をもらいうけることもできません。(校長に人事権はなくせいぜい意見具申権があるだけです。)

 民間企業と逆に現場の力が強いです。企業は縦社会で上下関係がはっきりしています。支店長ー副支店長ー部長ー次長ー課長ー課長補佐ー係長ー主任ー平社員となります。一度役が上がるとよほど問題を起こさない限り降格にはなりません。

 ところが学校では支店長に相当する校長と副支店長に相当する教頭だけが固定的な職です。支店の3番目つまり教頭代理に相当する教務主任でも主任をやめれば企業でいう平になるのです。ですから企業で言えば課長は何年たっても課長だし、平が突然課長になり課長が平に突然なったりしないので安定的な管理が可能なのです。

 つまり学校では安定的な管理体制が難しいです。そのため支店の管理職に該当する学校の主任や主事と呼ばれる人は前例をまず踏襲するしかないのです。また管理職になるためにはそれ以前に簡便な管理業務を経験してなります。

 たとえば平から主任になれば部下が数人でき、係長になれば2人くらいの主任と平が数人つきます。それを管理して次が課長補佐ということになるのです。学校では組織や人事管理経験のない人が管理的なポストに突然つくのです。

 民間企業から来た校長はこのような学校の運営組織や組織文化に驚くでしょう。部長が課長に命令すればきちんと命令が平まで通じるような組織ではありません。学校では役職のない平と言っても30年以上の経験と教頭補佐などを経験した人から経験3年未満の人までいるのです。

 ベテラン教師にとって民間企業から突然天下った校長などいかほどのものという気持ちがあります。民間人校長は管理はしても授業経験はないのです。学校では授業をする者が中心なのです。医者の世界に似ています。どんなに管理能力がすぐれていても、患者を治療できなければ医者としての権威を確立できません。

 医者の経験がないのに医者を指導できる院長はいないでしょう。証券会社に勤務していた病院長が内科部長を指導するなどできません。そこまでいかないにしても一度も授業したことがないのに授業について意見を言ってもなかなか聞いてもらえないでしょう。

 経営が上手なだけでは専門職意識の強い医者を動かすことはできないでしょう。企業であれば左遷というのもあります。遠くの支店へ異動させたりできます。ところが教師の世界では左遷はありません。単なる人事異動だけです。

 なぜなら勤務先の大小や生徒の優秀さによって勤務先(学校)に格差をつけてはいけないからです。大規模校でも小規模校でも教師の給料は同じだし評価も同じなのです。企業の場合、大規模支店なら取締役支店長などというのがありますが、学校の場合みな校長だし、教諭なのです。

 ですから教師の世界の実態を知らずに民間から校長になると大変なのです。1年間で2割も問題校長がでてくるはずです。教師の世界は独特だと言いますが、教師の側からみれば民間の世界も異次元の世界なのです。

 民間から民間へ転職するのも大変ですが、学校だからたいしたことはないだろうと思うと大変なことになります。橋下さんはあんな性格ですから何があっても現在の政策を変えるつもりはないでしょう。しかし、意地になって一番迷惑するのは現場なのです。

 数人くらい民間から校長をするのはいいのですが、数十人単位で民間から校長を選ぶならさらに問題がおこると思います。

 明日の相場はどうなるのか注目されます。