新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

教育をめぐる二つの話題ー大阪と静岡

今日も残暑が厳しかったです。今もエアコンを使っています。午前中は授業で午後からはだらだら過ごしました。前期の授業はこれで終わりです。後は期末考査を待つだけです。

 株価は昨日くらいから落ち着いた動きです。今日も値下がりのあと若干の値上がりで終わりました。どうも買い気はあるのですが、力強く上昇する傾向はなさそうです。

 やはり10月の消費税値上げ発表待ちでしょう。値上げの発表だと思いますが、万が一延期などということになれば一気に相場は下落ということになります。

 ところで今日は教育ネタです。おじさんの本職は教員なのに普段は教育と関係ない政治や経済の話がほとんどです。まあ教育の話はあまり広がりがないので仕方のないことです。

 まずは大阪の話からです。ヤフーニュースで大阪の公募小学校校長が今度は勝手に自分の教育活動に関するアンケートを行ったということです。民間に勤務する読者の方にとって何が問題なのかと言うことになるでしょう。実は民間公募校長が問題を起こすには、民間の常識が公務員特に教職の非常識なのです。

 民間ではかなりの自由が認められています。そもそも民間企業の社員を縛るのは社内規定だけでしょう。それでもある程度の地位の人(部長とか支店長)になれば自分の裁量でいろいろなことができます。

 ところが公務員特に教職の場合何をしても話題になるのです。アンケートくらいいいではないかということになりますが、校長が自分の評価を教育員会と相談せず勝手にアンケートをするなど長年教員をしていた人間なら絶対にしないことです。

 もし教員が校長に相談なく自分に対する評価アンケートを保護者にしたら校長室へすぐ呼ばれます。そんな勝手なことをなぜしたのか、内容に問題があったらどうするのか校長から詰問されます。教師が何かをする(対保護者アンケートなど)場合は、教頭・校長時には教育委員会の承認が必要なのです。

 公務員特に教職は世間の目も厳しく、法令法規(条例など)以外に慣例などがんじがらめに縛れているのです。だから自由に教育ができないのです。

 また静岡の例は学力テストの点数の低い学校の校長名を公表するという件です。橋下さんなどは教育への首長の介入を認めるべきだと主張しています。しかし、教育について専門的な知識のない人がなると困ったことになります。

 点数の低い学校は単に教員が怠けているわけではないのです。教師の世界の常識として、学業成績は家庭や地域の状況と大きな関係があるのです。どんな優秀な教員をそろえても厳しい家庭環境(経済的・精神的に)の子供の多い地域の学校の学力は低いです。

 経済的に豊かで家庭環境も恵まれた地域の学校は当然学力が高いです。ですから、そのような恵まれた環境の学校で学力テストの成績が低ければ校長が教育委員会から注意をされても仕方がありません。

 ところが、厳しい環境の中でがんばっている学校があって、最下位から10位ランクを上げてもほめられることはないでしょう。10位ランクを上げても全体の中では下位50位以内だからです。

 家も狭く落ち着いて勉強できる場所もなく、両親がケンカばかりしていて、経済的にも不安定だし、兄弟も学校を中退したりしている中で本人だけが高い学力をつけることは無理です。

 昔はそんな家庭でもがんばる子供がいたという方もいます。しかし、時代が違います。昔は塾も家庭教師も通信教育もなく、全て学校が教育を担いました。つまり、皆同じ条件で勝負したのです。それに頑張って勉強すれば将来豊かになるという希望もありました。

 現代の中国がそうです。勉強しなければ絶対に豊かになれません。また貧しくてもチャンスはあります。成績さえ良ければ返さなくて良い奨学金もあります。今日本で一番困ったことは頑張って勉強しても豊かになれるとは限らないし、勉強しなくてもそこそこ生きていけるということです。

 簡単に言えば現代日本では学力が向上するかどうかは教師つまり学校の力というより、家庭の力にかかっています。以前聞いた話では東京の小学校では学校が頑張ると放課後の塾にさしさわるからそこそこにしてくれと家庭が言ってくるということです。

 塾であれば、学力テストの過去問を分析して練習問題を何度もやらせて、対策をたてるでしょう。そうすれば間違いなく点数は上がります。ただそれは学力テストの目的と異なっています。

 学力テストが全国の優秀な学校を表彰したり、優秀な子供を選出するためのコンクールならいいのですが、学力テストはそうではないと思います。全国の全部の学校に実施するなら静岡のようなことが予想されたことです。

 教育問題は格差問題でもあります。経済格差が開けば教育格差も開きます。おじさんの県でも見事に経済格差が学力テストの点数にでています。県庁所在地を中心とする地域が一番成績がよく、産業構造の変化で衰退した地域が一番成績が低いです。農村部はその中間です。

 おじさんの県の教育関係者はたとえ学力テスト低位の学校の校長の名前を公表しても経済格差が解消できない現状ではどんなに努力しても衰退した地域の学校が県内で一番繁栄している県庁所在地の地域の学校に追いつくはずはないと思っています。

 もしそれが可能な方法が見つかれば、それは博士号授与あるいは文化勲章にも相当することでしょう。明日はのんびり過ごします。