新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

戦術的勝利と戦略的敗北ー奇襲的参拝を中心に

今日は晴天でした。と言っても時々雪も交じっていました。明日も寒そうです。今日は前回洗車したのですが、雨で汚れたので、車を水洗いしました。また買い物にお付き合いしたりして時間を過ごしました。

 ところで安倍総理の奇襲的参拝について国外の意見が出そろいました。おじさんが予想した以上の反響です。国内でも本来保守的な意見が多いアゴラ(意見サイト)も痛烈に批判していました。(「首相の靖国参拝ー日本は一人で生きていく覚悟があるのか 」 北村隆司 「安倍首相はオバマ政権にとって鳩山由紀夫(右翼のルビー)となった」 砧谷幸一)などです。

 マスコミは一斉に参拝を批判しました。とくにどちらかと言うと保守よりの読売新聞も参拝を支持しなかったようです。新聞で支持したのは産経新聞だけだったようです。

 さてタイトルの戦術的勝利ですが、今回の参拝はまさに誰も予想しなかったという点では安倍さんの勝利です。自民党内部でもほとんど知らなかったようです。毎日新聞などは年内参拝はないと書いた直後だったようです。

 つまり安倍さんの戦術は見事に的中したのです。奇襲が見事に成功した例として真珠湾攻撃があります。オバマ政権は今回の奇襲的参拝でそれを連想したのかもしれません。

 戦術的勝利は決して戦略的勝利を意味するものではありません。真珠湾攻撃でもアメリカは日本の不意打ちで艦船と人員を多数失うという戦術的敗北を期しました。しかし、それはアメリカ国民を団結させ、日本に対して徹底的に戦う意志を持たせました。そしてそれは戦略的勝利につながりました。

 もし真珠湾攻撃がなければ、アメリカ国内でも一致して戦争に参戦することはなかったかもしれません。非戦論が出た可能性もあります。またアメリカだけでなく世界中の国が日本は不意打ちをくらわす卑怯な国だと思ったでしょう。その点で当時の日本は戦略的敗北をきしたのです。

 戦術的勝利に沸いたのは日本国内だけです。今回の奇襲的参拝で沸いているのは一部の民族派の人たちだけです。外務省はもちろん、防衛省、TPPを担当する通商産業省、官庁の中の官庁財務省などは今頃対策に追われているでしょう。外務省の担当者は正月が吹っ飛びました。

 安倍さんは中国や韓国の反発を予想していたでしょうが、まさかアメリカがあそこまで厳しい論調で批判するとは予想できなかったと思います。安倍さんは特定秘密法案でも世論の動向を見誤りました。あれも法案を通すという戦術的勝利であっても、支持率を減らすという戦略的な失敗を招きました。

 今回も同様です。今回はさすがに官界も財界も安倍さんを見放したと思います。このまま長期政権などになってもらったら外交交渉など不可能です。さらにまずいのは中国の対応を見誤ったことです。中国は尖閣列島問題で盛大なは何日デモを行いました。

 これによって日本に圧力をかけようという戦術です。しかし、これは戦術的には成功しましたが、戦略的には失敗しました。国内のガス抜きにはなりましたが、世界中から中国は野蛮な国だと批判されました。

 中国政府はこれに学んで、政府としては強い口調で批判しましたが、反日デモは抑えました。安倍さんは再び大規模な反日デモが起こり、参拝批判より中国の反日デモの方が目立つて、批判は日本でなく中国へ向かうと考えたのでしょう。

 しかし、反日デモを抑制した中国は理性的な対応をしたと世界中から受け取られました。つまり中国も大人になったとみられているのです。おじさんが中国指導者であっても当然そのくらいは考えます。かって旧日本軍は繰り返し同じ失敗をしました。

 それは誰が決めるのかあいまいな組織的欠陥だったのです。中国は逆に失敗から学んでいるのです。韓国の場合、ボクシングで言えばコーナーまで追い詰められていたのに、ゴングで救われたようなものです。ゴングを鳴らしたのは安倍さんです。

 韓国は国内でなぜ日本と対立するのか、歴史認識にこだわるべきではないと言う意見が出始めていました。それなのに日本が歴史認識という6年以上封印されていたパンドラの箱を開けてしまったのです。小泉さんが参拝した時代と今は違います。

 世界中が安倍政権は軍隊を復活しアジアで中国と戦争するのではないかと心配しています。それに戦後レジュームの見直しを行い戦前に戻るのではないかと心配しています。これは中国と連携して対抗しなければならない東南アジアの国も同様です。

 東南アジアの政府もまさか日本がかっての時代に戻るはずはないと思っていました。しかし、突然の奇襲的参拝に衝撃を受けているはずです。日本と連携するのは日本の軍事力をあてにしているのではありません。軍事的脅威がないからこそ安心して連携しようとしているのです。

 日本が強力な軍隊を持つ悪夢は東南アジア全体にあります。もし過去の時代のように東南アジアの資源を求めて軍事力で進出してくるなら、日本と連携するのでなく中国と連携して軍事大国日本に対抗しなければなりません。

 東南アジア諸国も過去の悪夢の時代まさに安倍さんの目指す戦前の日本を恐れているのです。そのにおいを嗅ぎ取った東南アジアの諸国はこれまでの日本寄りの姿勢から中国よりの姿勢に変わるでしょう。中国と連携することはないと思いますが、スタンスあるいは微妙なバランスの変化があるでしょう。

 ことほど左様に今回の奇襲的参拝は世界中に波紋を投げかけました。安倍さんの予想を上回る世界中の懸念を払しょくするためには、集団的自衛権の問題はもちろん武器輸出三原則の見直し、まで考えなおさなければなりません。

 まして憲法九条を改正したり憲法自身を改正すると言いだせば、間違いなく世界中で孤立するでしょう。なぜなら参拝をしただけでこれだけの反発があったからです。すでに自民党の一部にはこれではやれない安倍政権を終わらさねばという動きがあるはずです。

 自民党の得意技はとかげのしっぽ切りです。安倍さんと言えども切られるでしょう。次をやりたい候補者はぞろぞろいます。案外麻生さんなどほくそ笑んでいるのかもしれません。麻生さんにとっては年始のお年玉としか思えないのかもしれません。
 
 そう言えば人気の頂点にあった橋下氏は慰安婦発言で失脚しました。都知事選過去最高の得票をした猪瀬さんも辞任しました。一強の自民党を率い高支持率を維持した安倍さんが今回の参拝で退陣する可能性もあります。日本社会は神輿に担ぐだけ担いで最後に振り落とし泥まみれにするのが大好きです。

 人気が高ければ高いほどその人を高見から引きずり下ろすのに快感を感じるのです。特に上から目線の人を引きずり下ろすのが大好きです。それによって快感を感じるのです。それも一瞬にしてそれが起こるのです。マスコミ的にもそれが大好きなのです。当然ですが、新聞や雑誌が売れるからです。

 明日は教会です。司式(礼拝の司会)をします。また孫たちが来ます。