新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

学説の変遷ーステップ細胞論議から思う

今日も晴天です。明日まで晴天とのことでした。今日は孫が小学校の入学式で、新一年生の姿を見せにきました。孫はおじさんの住む街から高速で1時間くらいの県庁所在地に住んでいます。

 保育園の頃と1月しか変わらないのですが、ランドセルをしょって黄色い帽子をかぶるとそれなりに小学生に見えます。やはり姿形は人間を変えるもののようです。

 株価は昨日自律反発で値上がりするだろうと予想しました。始まりは予想通りだったので、安心していましたが、どんどん下落して結局わずかな値上がりで終わりました。今日の夜の先物取引ではさらに下落しているようです。明日大幅安だと14000円割れもありそうです。

 アベノミックスの象徴であった株価も為替相場も完全に終わったようです。それにTPP交渉もせっかく豪州との合意が成立したのに物別れのようです。捕鯨問題における完敗といい、TPP交渉の停滞といい、ウクライナ問題によるロシアとの決別といい安倍政権の外交運営は行き詰っているようです。

 そんな生臭い話は今日はなしです。小保方さんが会見して以来またまた議論が巻き起こっています。科学においてはこんなことはしょっちゅうなのです。

 ある方は小保方さんは職人であって研究者ではないと書いたいました。これは納得できます。職人だとすれば、技を公開することはありません。秘伝なのですから。また結果が全てです。途中経過はどうでもいいのです。小保方さんの場合であれば、ステップ細胞が存在していればそれでよいのです。

 この話から実はおじさんの専門分野の話を思い出しました。ちょっとというか相当専門的になるので興味のないかたはこの辺で読むのをやめていただいて結構です。

 おじさんの専門は国語学です。国文科の卒業生は近代文学や古典文学(源氏物語など)以外に国語学を学びます。国文科というのは本来国語(学)・国文学と言えるのです。

 国語学は現在日本語学と呼ばれています。その中で20世紀最大の発見と言われるのが上代特殊仮名遣いの発見です。というより江戸時代にすでに発見されていた事実を20世紀になって再発見してのです。

 上代特殊仮名遣いというのは、奈良時代、ある特定の語について2種類の発音があったという説です。「き」とか「ひ」とか「も」とかです。(き・ひ・み・け・へ・め・こ・そ・と・の・も・よ・ろ)なぜそれが分かったかと言うと万葉集に使われている漢字(万葉仮名)を分類しているうちに、ある語に用いられている万葉仮名が一定であることに気付いたからなのです。

 発見したのは江戸時代のことで、「仮名遣い奥山路」(かなづかいおくのやまぢ)という本で発表されたのです。作者は石塚竜麿という人です。ところがこれが何を意味するのか当時の人は誰も分かりませんでした。

 その後東大教授の橋本新吉博士がこれに気付き論文を発表しましたが、当時の人は誰も何を言っているのか理解できなかったそうです。随分たってその意味が分かって国語史上有数の発見と呼ばれました。

 ところがその後1970年代頃からその存在を否定する研究が発表されるようになりました。おじさんもそれについて論文を見たことがあります。いまでも上代特殊仮名遣いが存在するのかどうか議論がなされています。

 ステップ細胞の存在についての議論と似ています。最初はその存在が理解できなかったけれど別の方がそれを立証しました。そして定説になったのですが、それから相当経過してまた否定する学説がでているのです。

 上代語の研究の場合テキストは万葉集など限られています。またその当時の発音を確定するのも大変です。ですから、今でも論争が続いているのです。最近上代特殊仮名遣いを否定する論文を見ないので、否定説がやや下火かとも思います。

 ただこの上代特殊仮名遣いについては同じ国文科でも漱石源氏物語を研究したいた学生には異次元のことのようでした。多分国語の先生でもこのことについて知っている人はほとんどいないと思います。

 このことは、今その存在を否定する人が多くても存在しないとは言えない事例です。江戸時代の人には上代特殊仮名遣いの存在など誰ひとり理解できなかったのです。時代が下って西洋言語学が入ってきて初めて理解できるようになったのです。

 おじさんとしてはステップ細胞が存在したらおもしろいと思います。そういう点では小保方さんの論文の書き方には問題が多すぎますが、本人が納得するまで研究させたらいいとも思います。

 明日も家事手伝いにいそしみます。