新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

武器輸出解禁について考えるーオーストラリアでの出来事から

今日は一日雨でした。本降りではなかったのですが、それでも傘が必要なほどでした。今日は午前中はツマクマのお買いもののお付き合いをし、午後からは本屋さんに行きました。

 雑誌は買わないで立ち読み専門です。それでいつごろ、どんな雑誌が発行されるか全て覚えています。今は月末なので、発行される雑誌も限定されます。今日は「世界の艦船」を読みました。この雑誌は相当古い歴史を持つ雑誌です。いまある軍事関係の雑誌ではこれと「丸」が古いです。

 今回の特集は「中国海軍」でした。艦船の名前に地名が使われていました。懐かしい地名が結構でていました。今でこそ中国の海軍拡充が日本中の話題になりますが、中国が海軍の近代化を始めたのは文革が終わってすぐからです。毛沢東の人民戦争理論から鄧小平が脱却を目指したのです。

 それについて警告した本も出版されたのですが、ほとんど注目されませんでした。「甦る中国海軍」などという本も出たのです。そこでは将来尖閣列島が問題になると書いてあったのですが、マスコミは全く注目しませんでした。

 中国の経済成長が2000年に入って本格化して以来急速に装備の現代化と拡充が進んだようです。中国にいた時の軍事ニュース番組でも海軍の活動がよく登場していました。装備の現代化は陸軍などより相当力を入れているようでした。

 その軍事番組とも少し今日のブログは関係します。最近安倍政権は武器輸出を解禁する方針を打ち出しました。目的は良く分かります。一つは防衛産業の保護と振興のためでしょう。伝統的に日本では武器の国産化を方針としています。

 そうは言っても結構な種類の武器をライセンス生産しています。ライセンス生産とは相手国の企業から技術を提供してもらって、国内の企業に生産を委託しているのです。航空機などはほとんどこれだと思います。

 小火器でも拳銃や機関銃の一部がそうです。さすがに基本となる小銃などは国産です。戦車なども国産です。戦車を輸出している国も多いのですがおじさんが見ても日本の戦車は日本国内でしか通用しないものです。

 なぜなら日本国内では各種の規制があるので、それにあわせているのです。それに武器として絶対必要な実射ができないからです。日本の国土の狭さと人口密度の高さのせいです。最大限の射程で射撃実験のできない兵器を購入する国はありません。

 ミサイルなどの誘導兵器も同様です。もうひとつの狙いは海外との技術交流でしょう。ヨーロッパなどでは戦闘機やその他兵器を共同開発しています。それぞれの国が得意の分野を提供して一つの兵器を作り上げるのです。三人寄れば文殊の知恵の武器版です。

 それに共同して作った兵器をそれぞれの国が保有するなら、有事にとても便利です。他国のすぐに兵器を使いこなせるからです。

 アジアではちょっと難しいでしょが。日本政府はアメリカやヨーロッパとそれをやりたいようです。特に航空機の分野でそれを狙っているようです。

 そこまではなるほどと思うのですが、国際関係はそんなに単純なものではありません。自国が提供するものは最小化し相手から受け取るのは最大化するというの国際関係の常識です。

 もちろん、相手あってのことです。特に後から加わるものの方が割を食うのは当然です。日本がアメリカと共同開発をしようとすれば、アメリカは日本の得意分野の技術の提供は受けるが、アメリカが何か特別の技術を提供するとは考えられません。

 なぜならアメリカは今でも独自で戦闘機などを開発できますが、日本はアメリカから買うしかないのです。それでは技術輸出はどうでしょう。先に書いたように、自国にとって利益になる技術しか購入しません。というかそのような技術提供を求めます。

 今回オーストラリアを訪問した日本の防衛大臣は潜水艦技術の提供を求められました。日本が世界に誇る技術は艦船に関する技術です。戦艦大和を作るほどのの技術水準があるのです。潜水艦技術も相当高度なものがあります。

 先の大戦では潜水艦の運用を間違ったので、潜水艦を有効活用できませんでした。簡単に言えば潜水艦を通商破壊戦に使わず軍艦を沈めることに使ったのです。タンカーが通っても無視して敵の軍艦ばかりを狙ったのです。アメリカは逆に大量の潜水艦を使って日本の商船やタンカーを沈めました。

 とは言え日本が世界で初めて航空機を搭載できるような巨大な潜水艦を開発したのも事実です。とくに潜水艦の強みである静粛性が優れています。潜水艦が静かに潜航し移動するにはスクリューの性能が大切です。それには潜水艦のスクリューにポイントがあるのだそうです。

 そのスクリューの表面がつるつるであればあるほど静粛性が高くなるのだそうです。その表面を磨く技術が世界トップレベルのようです。日本の強みは職人技です。残念なことに大量生産大量消費する小銃などでは逆にまずいのです。

 これはロシアなどがお手の物です。あのAK47がその典型です。さて本題です。日本が出したくない技術こそ相手国が求めるものなのです。もし日本がその技術を出さないのなら日本が武器輸出を解禁しても何の意味もありません。

 だからと言って新興国に一方的に技術を提供し、それが中国などに流出するだけです。当然のことなのですが、日本の防衛大臣は突然オールトラリア側からそんな話を持ち出されて当惑したようです。ニュースを見てああこんなレベルなのだろうなと思いました。

 ちなみにもう一つ日本が世界に誇る軍事技術は掃海です。機雷撤去技術です。もし日本が掃海艇を売りだしたら世界中から買いにくるでしょう。機雷は海の地雷です。これがあると敵の艦船は全く近付けないのです。

 これも日本側からすると外国に出したくない技術です。それでは何を輸出するつもりなのでしょうか。以前飛行艇を売るような話がありましが、すでに時代は飛行艇の時代ではありません。

 外国が欲しい軍事技術は日本が出したくない技術なのです。TPP交渉以上に何を出し何をもらうのか難しいです。TPP担当大臣がこの仕事は二度としたくないと言ったそうですが、もし軍事技術の交流が本格化すれば、防衛大臣も同じことを言うでしょう。

 明日は子供や孫たちが来ます。