新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

「日清戦争」(中公新書)を読んで

今日の株式市況は50円ちょいの値下がりでした。一時は100円以上の値下がりでしたが、何とか50円ちょいの値下がりでとまりました。

 と言っても値下がりした株の数は値上がりした株の2倍です。おじさんの持ち株は少しですがほとんど値上がりでした。と言っても値上がり幅は数円です。

 ところで今日はひと月くらい前に読み終えた「日清戦争」(中公新書)について書きます。以前は岩波新書をよく読んでいたのですが、この頃は中公新書を主に読んでいます。

 最近の新聞の書評欄でも中公新書がよく取り上げられます。「スターリン」「地方消滅」そして今回書く「日清戦争」です。歴史は通説と事実の間に大きな食い違いがあります。以前読んだ「黒田官兵衛」でも、通説では彼は貿易のためにキリシタンになったが、秀吉から脅されてすぐ棄教したというものです。

 しかし、事実は彼の死後キリシタンによって1年後追悼ミサが行われた事実があるのです。まあ世間の人は歴史的事実などどうでもよいことなので通説を信じているのです。

 日清戦争についても通説が広く流通しています。筆者は日本全体に流通する通説について痛烈な批判をします。「中高の歴史教育にも問題があると痛感した。」とまで書きます。

 その通説を筆者は「根拠のない言説」とまで言います。具体的には「日清戦争は朝鮮独立を助けた正義の戦争」「日本軍は国際法を順守した」「乃木希典は一日で旅順を攻め落とした」などです。

 おじさんも以前はこれに近い通説を信じていました。しかし、以前同じ中公新書の「小村寿太郎」を読んで少し考えを変えました。朝鮮をロシアの侵略から日本が守ったという通説です。これは真逆で、日本の圧力を感じた朝鮮の王はロシアの公使館に逃げ込んだのです。

 また日本の歴史教育ではあまり取り上げられませんが、日本の外交官が中心になって朝鮮の皇族(閔紀)殺したのも事実のようです。日清戦争では旅順で市民の虐殺を行っています。南京虐殺はしばしば話題になりますが、こちらはほとんど取り上げられません。

 もう一つ印象的なのは中国にいた時見たテレビ番組です。この番組を見ておじさんもびっくりしました。下関条約で台湾を中国から割譲されたということはおじさんも高校生の時に習いました。

 実は中国で見たテレビ番組によるとその後台湾が長きにわたって日本軍に抵抗していたのです。中国人なら皆知っているのですが、おじさんも5年くらい前その番組を見るまで知りませんでした。

 著者によれば日清戦争の死者よりこの台湾でも戦争で死んだ人の方が多かったそうです。本文では「台湾の抗日闘争、朝鮮の義兵闘争」と章立てがされています。

 日本と中国・韓国との間では様々な歴史認識の食い違いがあります。さまざまな事実のうち自国に有利な事実は声高に主張しますが、自国に不利な事実は取り上げないのです。

 現在では日本に不都合な歴史的事実を取り上げると自虐史観だと言われます。そんな時代歴史の事業で日本の外交官が朝鮮の皇族を殺して井戸に投げ込んだとか、下関条約でもらた台湾の住民は日本の

 統治を嫌って反抗を続けたとか、日本の支配を嫌って朝鮮の王がロシア公使館に逃げ込んだとか、日清戦争で日本軍は旅順で中国人を虐殺したなどと授業で話したら間違いなく偏向教育と言われるでしょう。

 しかし、いずれも歴史的事実なのです。アゴラなどでも韓国が悪い日本は悪くないと主張する方がいます。日韓併合でも韓国が望んだのだという意見もあります。しかし、自国の皇族を日本人に殺され、王も日本の支配を嫌って外国大使館の亡命するのに、当時の韓国国民が日本に対して好意的であるはずはありません。

 これは立場が逆であれば明らかです。日本の皇族が韓国人に殺され井戸に投げ込まれ、天皇が韓国の支配を嫌ってロシア大使館に亡命したことを想起していただければ明白です。いやそれは過去のことだ、今の韓国は違うといってパスできるでしょうか。

 歴史認識の違いは難しいです。ただ日本に有利な材料だけを取り上げて他国を非難すると難しいことになります。過去の日本の良いところも悪いところもどちらも教えなければ難しいことになるでしょう。

 明日は庭の芝刈りです。