過ぎたるはなお及ばざるが如しー円安進行の波紋
とうとうアメリカ市場で対ドル円で121円になったと報道されていました。アメリカの雇用情勢が予想を上回ったので、来年の金利引き上げが現実のものとなったためです。
円安がさらに進むことは間違いありません。ところで勿論のことですが、円安がどんどん進行すれば日本が豊かになるわけではないでしょう。タイトルにも書いたように、行き過ぎると足りない以上困ったことになるのです。
単純に考えて70円台だった円が140円台になれば輸入品の値段が2倍になるはずです。今の勢いでは円が130円台まで行くことは間違いありません。たぶん来年初めにはそうなるでしょう。
もちろん政府日銀はその動きを止める気はないでしょう。政府日銀にとって物価が上がることが目標なのですから。円安を食い止めるのは簡単です。追加緩和を終わらせるだけで一気に円は110円台までもどるでしょう。しかし、政府日銀は国民の生活苦より輸出産業の利益を優先しているのです。
円安は輸出産業にとって追い風になります。何もしなくて受け取り収入が増えるからです。1万ドルで売った品物が数年前なら70万円ちょとにしかなりませんでした。それが今だと120万円になるのですから、その差は50万円の利益になります。
つまり何の努力もなく利益を得ることができるのです。その分消費者は大変です。単純に言えば以前なら70円で買えた輸入品が120円出さないといけなくなるからです。食料品の大半が輸入です。とくに小麦や大豆は生活に欠かせません。(パンや豆腐など)
また飼料も大半が輸入なので肉製品や乳製品にも影響がでます。すでにバターは品不足になっています。得をしたのは輸出産業に勤務するサラリーマンです。輸出産業のほとんどは大企業です。それも本社は東京です。東京のエリートサラリーマンが得をすることになります。
逆に農業や畜産業は円安のあおりで経営が苦しくなります。そうなれば輸入品の価格は上がるは国内産の食料品の価格は上がるはで消費者は生活難になります。もちろん製品価格の上昇に対抗するため消費者は買い控えや節約で対抗するでしょう。
中小企業や非輸出産業は円安に苦しめられることになります。もちろん高齢者は年金だけで暮らしているので円安の被害は被っても恩恵はありません。非正規労働者も時給が少し上がったくらいでは円安による物価高には追い付かないでしょう。
高齢者でも円安で得をする人もいます。格差は高齢者でも広がります。一番得をする人は外貨とくにドルを持ちまた株式をもっている人です。
普通の高齢者でドルや株式をもっている人は少ないでしょう。株式をもっている人もすでに売ってしまった人も多いと思います。
おじさんはたまたま株式とドルをもっているので円安の恩恵を少し被っています。ただこんな急速な円安株高は予想外でした。
円安の怖さをまだ国民は実感していないようです。今の円安の影響が現実のものとなるのは年明け以降です。設備投資は伸びているようですが、年明け以降消費は落ちるでしょう。輸出産業にしても来年春以降大幅な賃上げをするとも思えません。
輸出産業以外の企業まで恩恵がまわってくるのはまだまだ先です。再来年が近くなれば消費税引き上げの期限がきます。今度再延期という選択はないと思います。