新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

AIIBと人民元の国際化

 先日AIIB(アジアインフラ投資銀行)に関する記事を探していると面白いブログに出会いました。「世に倦む日々」というブログです。どうも有料みたいですが、おじさんが見たのは偶然すべて公開されたものでした。

 この方のAIIBに関する視点は他のブログや記事(ダイヤモンドオンライン・アゴラ)などと比べると格段に鋭い分析でした。このブログの視点の鋭さは反中国感情や中国共産党支配と言った視点ではなく、人民元の国際化の視点から論じている点です。

 日本のマスコミは全く指摘しませんが、中国元の国際化は想像以上に進んでいました。人民元の国際化についてはおじさんも以前ブログに書いたことがあります。それはロンドンに人民元の取引市場が開設されたことについてです。

 人民元の取引市場のことを人民元オフショア市場と言います。オフショアというのは簡単に言えば海外で人民元を取り扱う市場のことです。それまでは香港だけだったのですが、その後ロンドンにも開設されたという記事を以前みたのです。

 新聞報道だったのですが、日本ではほとんど注目されませんでした。おじさんもその後の報道がなかったので、ロンドンだけだと思っていました。ところが「世に倦む日々」の記事の中で、その後フランクフルト・パリ・ルクセンブルグに開設されたようです。

 この人民元オフショア市場が開設された場所は今回のアジアインフラ投資銀行に参加した国にあるのです。ヨーロッパではイギリスが真っ先にAIIB に参加表明をしました。人民元オフショア市場もイギリスがヨーロッパで最初に開設されたということはイギリスは中国の国際金融の内情を知っていたはずです。

 イギリスに続いて参加したのがドイツ・フランスだったのもうなずけます。さらにルクセンブルグも参加表明したのも理解できるところです。

 これらの国は人民元オフショア市場をもっているのです。中国人民元の国際化についてはある研究所が継続的に研究しているのです。この研究所はもともとは政府機関だったのですが、今では法人として独立しています。

 サイトで調べたら何と元財務官として国際金融の政府責任者であった行天氏が所長でした。その研究所は国際通貨研究所と言います。おじさんも昨日「世に倦む日々」を読むまで知りませんでした。

 その研究所では2014年3月には「新たな段階に入る人民元為替相場改革」4月には「中国本土・香港相互株式投信解禁を発表
人民元国際化への新たなステップ」7月「欧州と韓国におけるオフショア人民元市場拡大の意味」と連続して中国の人民元国際化の動きを取り上げています。

 ニュージーランドも2014年に人民元による直接決済を決めています。AIIBについても、オセアニア地域では真っ先に参加したのも、人民元国際化の動きと無関係ではないでしょう。

 韓国も人民元オフショア市場を開設しています。AIIB 参加が単にバスに乗り遅れるなの国もありますが、欧州からの参加国はすでに中国との間で国際金融関係ができていたのです。

 日本では中国経済崩壊論とか中国政治崩壊論が盛んですが、一方では中国人民元がどんどん国際化しているという報告もあるのです。それも元政府研究機関からなのです。

 日本のマスコミもネット右翼の方々も現実には中国がどんどん国際金融界に進出していることを知るべきです。おじさんは中国にいて中国をずっと観察していました。中国の強さも弱さも体験しています。

 アジアインフラ投資銀行についても中国政府は最初の国際金融機関の運営なので相当慎重に動くと思います。もちろん、失敗も多いと思いますが、中国の強みはその失敗を糧に次の戦略を考える点です。

 何かする前から完全を目指すのが日本です。しかし、日本以外の国は失敗は当たり前、次を目指すというものです。安全保障を理由に日本政府はAIIB 参加を拒んでいますが、中国と対決するベトナムもフイリッピンも当初から参加しているのです。

 まあ、今の時点で日本が参加することは対世論の上からも自民党内での保守派の動向などから無理でしょう。別にだからと言って日本がAIIB 参加することをおじさんも求めてはいません。

 ただ日本の国民が思っている以上に中国の金融国際化が進んでいることを書きたかっただけです。おじさんの予想では将来ドルと並んで人民元基軸通貨になる可能性もあります。
 
 そうなれば、爆買いしている中国人が人民元で日本の商品を買ったり宿泊したりできるようになるかもしれませんね。