新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

「左遷論」を読むー教師の場合

 今読み終わったのは「左遷論」(中公新書)です。組織論については大学院の時修士論文で「県立高校における運営組織の研究」を書いたので興味があったのです。

 修士論文を書く時も、おじさんの県の人事異動について書きたかったのですが、担当教官が現職なのでまずいことになりますよと言われてやめた経験があります。

 この本では案外自分は左遷と思っても、組織全体の都合の場合が多いとありました。また、他人の評価より3割近かく自分自身の評価が高いとも書かれていました。

 ところで、おじさんたち教師の場合左遷と言うものがあるのでしょうか。普通に考えれば都市部や県庁所在地のトップ進学校を頂点に郡部の専門高校あたりが底辺と思われるでしょう。

 ところが教師の場合そうはならないのです。おじさんは高校教師のみ経験しかありませんが、どこの県でも勤務する学校での差はありません。

 中心都市のトップ進学校にいても出世できるわけではありません。逆に問題のある学校を立て直した場合、手腕を評価されて出世することができます。

 トップ進学校にいると出世より、優秀な生徒を長く教えたいと思うようになります。県によっては、ローテーションを組んで一度は必ず何年間か田舎に行かないといけないようにしているところもあります。

 また教頭になるためには、普通高校以外に専門高校や定時制などに勤務しないといけない県もあります。実際学校を転勤するというのは同業他社に転職するようなものです。

 農業高校での経験は進学校では何の役にも立ちません。東大を目指す生徒の指導ができる学力があっても、教育困難校では何の役にも立ちません。

 同じ普通科高校でも対象とする大学や進学先が違うのでこれもまた以前の経験が役に立たないのです。左遷の反対の出世も難しいです。

 学校の場合、今は少し違いますが、校長と教頭以外皆平なのです。では教務主任とか学年主任はと思われる方ももいますが、あれは平教員を充てているだけなのです。

 身分ではないので、今年教務主任でも来年は平に戻るかもしれません。また、転勤すれば新入社員と同じでまず1年は主任とか主事になったりすることはありません。

 企業では支社から本社に行くのは栄転ですが、教員の場合、教育委員会に行ったからと言って出世ではありません。よく言われる指導主事なども、ランクがあって主事級・係長級・課長補佐級とあります。

 このうち現場に戻って教頭になれるのは課長補佐級だけです。ですから指導主事に出ても平で戻ってくる人も結構います。

 校長の場合でも教育員会に行くと出世したように思われます。教員の教育委員会での最高ポストは理事です。これは教育次長級、会社でいえば副社長クラスです。

 なぜなら教育長・教育次長・理事の順で、その後に部長が続くのです。企業の部長と違っておじさんの県の場合、教育委員会の部長は4人しかいないのです。

 こんなんに偉い理事も現場の学校に戻ればただの校長です。校長のランクは先任順、また地域有力校順です。たとえ、教育委員会の理事をしていても現場の地区では別の序列があるのです。

 なぜ理事までなって現場に戻るのかと言えば、理事は行政職で校長は教育職です。行政職の場合管理職手当は高いのですが、退職金や年金の基礎となる本給は教育職の方が高いのです。

 教員は役職がない代わりに本給を高くしています。また教育職にだけある手当などがあるのです。まあ、教師の世界はこの世のルールと違ったものがあります。

 強いて言えば医者の世界に近い物があるかもしれません。義務制の学校とも違います。義務制の学校の場合組織が小さいし、上部機関の教育委員会の規模も小さいからです。

 高校の場合役割分担がはっきりしていて企業組織に近いのですが、また独特な世界です。明日は日曜日なので教会です。