新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

「憎悪のパレード」を読むー思い出したある出来事

 今日は日曜日なので普段は教会ネタなのですが、モーセの話で読者にはなじみがないので別のことを書きます。

 昨日は新聞で見た講演会に行ってきました。市内の中世遺跡についてです。地名は知っていましたし、その場所にいた豪族についても知っていましたが、やはり話を聞くと違いました。

 一度そこに行ってみたいと思いました。ところで今日は先日買った小説についてです。おじさんがこのシリーズを読み始めたのはずいぶん前ののことです。

 作者は石田衣良です。今日のブログは、彼の代表作ともいえるシリーズ「池袋ウエストゲートパーク」です。主人公は真島マコトとタカシです。

 短編の集まりなのですが、作者が短編の中からわざわざこの題名を選んだのは作者の思いがあったからだと思います。この題名の話は以前から問題になっているヘイトスピーチを取り上げているのです。

 作品によっては明らかな特定の国の人に対する露骨な差別あるいは蔑視観のでているものもあります。シリーズで読んでいる某公安警察を題材にしたシリーズでは、誰であれその国の人間は嫌いだと言った表現がでてきます。

 それと真逆なのがこの小説です。作者の人間観が良く出ています。まず書き出しから「昔から使っちゃいけない言葉があった。」です。それは人間としてどんな時にもぎりぎりのところで抑制を利かせないといけない言葉だともいいます。
 
 言葉は時として凶器にもなるのです。作者のヘイトスピーチに対する考えが最もよくでているのが、「出身国や民族といった、その人間の個性でなく、属性だけで無条件に憎む、失われた二十年で、おれたちはそこまで追い詰められていたのだ。」

 先述した公安警察の担当者はこれと真逆でだれであるその国の人間は皆嫌いだと登場人物に言わせるのです。

  中国にいたと言うと、ほとんどの人が、反日で大変だったでしょうと言います。おじさんも中国に行く前は反日で大変だろうと思っていました。

 ところが、中国で親切にしてもらった数に対して直接反日的な言動をされたのは3年間で1回だけです。それも英語で「日本人は嫌いだ。」と言われたくらいです。

 大学に赴任してすぐのことです。大学の近くの観光地に行ったのですが、帰りのバス乗り場がわかりませんでした。ある警察官に帰りのバスの乗り場を聞いたら、バスの運転手に降りるバス停を教えたみたいでした。バスに乗ったらその運転手はおじさんたちに向かって「ジャパン」笑いながら話しかけてきました。

 おじさんたちは、買い物もあったので本来のバス停より手前で降りようとしたら、その運転手はここじゃないと言う様子を見せるのです。あの警察官がこの人たちを降りるべきバス停で降ろしてほしいと伝えたのだと思いました。

 中国に行ってすぐの出来事です。おじさんが勤務する大学のバス停を言ったので、そこの日本人の先生だと分かったと思います。

 行きつけの靴屋のおじさんも「日本人は友達」と中国語で言っていました。別のお店では、おつりが少なかったと追いかけて返してくれました。

 今回のシルクロードツアーでもお釣りが少なかったと言って後で返してくれたとある人が話していました。中国人だからと言って皆ぼったくりではないのです。

 ある時空港から一人で官舎まで帰るので、行先とタクシー代を手帳に書いてみせました。するとその値段で行ってくれました。そこまでは普通の話なのですが、実は書いた値段が安すぎますと学生さんから言われたのです。

 その運転手は外国人だt仕方ないと思ったのでしょう。事実、学生さんと空港から帰った時のタクシー代と比べて相当安い値段でした。

 実際にその国の人と付き合ったりしてみないと分からないのです。今対立している中国でもそうです。中国人の中にもいい人がいっぱいいます。学生さんでも皆反日ではないのです。

 そういえばバスの中でツマクマと日本語で話していても、若い人が席をゆずってくれたりしました。最初肩をたたかれた時、何か言われるのかと思ったのですが、席を譲ってくれるのだと分かりました。

 憎悪は自分に戻ってきます。「天に向かってつばを吐く」と言うのがあります。天に向かって唾を吐けば、吐いた自分にふりかかるのです。

 憎悪は憎悪しか招きません。憎悪のパレードはどこかで止めなければなりません。池袋ウェストゲートパークは小説としても面白かったですが、社会に対する警告の書としてもおもしろいです。

 ちなみに解説を書いたのはアンチヘイトスピーチ安田浩一氏です。石田衣良氏の小説とはこれまで程遠い存在ですたが、この内容なら彼しか解説を書く人はいないでしょう。

 明日は家で教会の仕事をします。(議事録の整理)