「帰郷」(浅田次郎著)を読むー二つの思い出
昨日書いた某電機株が今日も大幅安です。すでに売った時から数十万円も下がっています。明日も多分大幅安になるだろうと思います。やはり株式相場は売りが難しいです。
そんな株ネタばかりではつまらないので、今日は最近読んだ小説についてです。帰郷は新聞の書評欄でも大きく取り上げられていました。何か賞ももらったようです。
ですから戦後体験も同じだと思います。「帰郷」は戦後すぐあるいは戦中を題材にしています。その中で「帰郷」と「金鵄のもとに」の二編は胸に迫るものがありました。
言い忘れましたが「帰郷」はいくつかの短編を集めたものです。「帰郷」という短編小説は、ある復員兵が娼婦と出会って語り合うという内容です。
復員兵は故郷に帰ってみると、自分は戦死したことになっており、妻は自分の弟の嫁になっているのです。そして弟との間にすでに子供が生まれそうなのです。
実はこれはどこにでもあった話なのです。実はおじさんが子供の頃同じ話を親たちから聞いたことがあります。祖母の身内の話です。
おじさんの父方の本家の前のうちでした。そこもやはり本人が戦死したと思って弟と結婚していたのです。ところが、兄が復員したため、弟と分かれて兄と夫婦を続けたそうです。
その後の話も覚えています。それを知った息子さんがショックを受けて、ぐれてしまったというのです。おじさんが小学生だったので、多分昭和20年代の終わりか30年代の初めころでしょう。
小説では復員兵は娼婦と結婚して人生をやり直すという内容になっています。中学でも高校でも戦争に参加した先生が大勢いました。ほとんどが学徒動員です。
もう一つは身につまされるのは「金鵄のもとに」です。これは傷痍軍人を扱ったものです。おじさんが中学生くらいの頃までいました。昭和30年代前半です。
白い服を着て軍帽をかぶり、アコーデオンなどを鳴らしてお金を集めていました。大人はあれはインチキだと言っていました。本当に戦争でけがをしたのでなく、無理に体を傷つけてそれで同情をかっているのだというのです。
中国の物乞いもほとんど障害でなく、大人が手足を折ったりして見世物にしているのだと聞きました。中国の学生さんも国の恥だからお金をやらないでと言っていました。昭和30年代の日本人も傷痍軍人は外国人に見られたら恥ずかしい国の恥だと思っていたでしょう。
おじさんはただ子供心に可哀想だと思いました。逆説ですが、中国の物乞いも、日本の傷痍軍人もお金を恵む人がいるから商売として成り立つのです。
中国でも誰が施しをするのか観察しました。するとお婆さんが孫にお金を握らせて施しをしているのを見ました。傷痍軍人に施しをしていたのも、戦争で子供や兄弟を亡くした女性たちだったかもしれません。
本家には遺族の家というアルミのプレートが張ってあったのを覚えています。戦争が終わってまもなく生まれた団塊の世代は生々しく戦争の傷跡を知っているのです。
ぜひこの本を読んでみてください。明日は大掃除をするのでブログをお休みするかもしれません。