新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

陶芸講演会に行ってきました。ー吉祥の図像学

 今日は近くの美術館であった陶芸講演会に行ってきました。先月行った講演会の続きです。その美術館に展示されている作品についての解説です。
 今回は「吉祥(きっしょう)の図像学」がテーマです。図像学とは描かれている図像についてその意味を考える学問です。その昔大学院で西洋美術史の講義を受けた時、西洋絵画に現れた図像の意味について説明を受けたことがあります。
 現れた図像には象徴的な意味があるのです。例えばどくろや骸骨の図像なら死を意味するなどです。今回はそんな不吉なものでなく、正月らしく「吉祥」つまりおめでたい図像についてです。
 まずおめでたい図像のトップは「松竹梅」です。象徴的な意味は、永寿・清廉・高潔です。簡単に言えば縁起がよいということです。松・柏・竹(笹)は常緑樹で青青といして色あせることがないので、子孫繁栄の象徴なのだそうです。
 陶器などにその図柄がよくもちられています。日本の場合吉祥としては余り用いられないのが「蝙蝠(こうもり)」です。蝙蝠のの蝙・蝠いずれの漢字も「フク」音で「幸福」の「福」に音が通じているのです。また鹿も音読みすると「ロク」なので「俸禄」に通じるのです。そのため蝙蝠と鹿は金運繁盛の象徴的な図像として描かれます。
 中国の明代や清代初期の景徳鎮で焼かれた陶器にもでていました。松竹梅以外の植物としては牡丹があります。これは富・裕福の象徴です。大輪の花を咲かせるからだろうと言われます。
 中国では魚も吉祥の図像とされました。中国の場合沿岸部が少なく大陸国なので魚と言えば川魚のようです。図像の象徴的な意味は豊とか子孫繁栄です。
 儒教思想において家の継続はなによりも大事なので子孫繁栄あるいは多子が重要な出来事だったようです。その象徴的な図像は「石榴(ざくろ)」です。小さな沢山の実がつくことから、多子の象徴的な図像となったのです。
 同じように、蔓(つる)に実がなることから、葡萄や瓜なども子孫繫栄の象徴的な図像として用いられました。つる草の連想からかぼちゃも図像として用いられた陶器があります。
 動植物以外では、福神(七福神)が吉祥の図像として用いられています。具体的な幸せというより、幸せをまとめてくれる神様としてです
 鶴亀なども長寿延命の象徴的な図像です。最後に日本独特な吉祥図像として富士山があります。富士は不死に音が通じることから延命長寿の象徴的な図像として用いられたのです。
 竹取物語でも駿河にある高い山でかぐや姫からもらった不死の薬を焼いたので不死山(ふじさん)というという地名起源説話もあります。
 こんな話を聞いて展示されている陶器類を見ると不思議な気持ちになりました。この講演会は3月にもあるので聞きに行くつもりです。明日は日曜日なので教会です。