新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

「怒涛の世紀」(12巻)を読む。

 昨日は授業の後ポスティングの準備で結構大変でした。今日は午前中ポステイングで午後からは疲れて昼寝です。ただポステイングをして帰ってシャワーを浴びてワインかビールを昼食時に飲むのは最高です。
 ポスティングの手当は恐ろしく安いのですが、それでも普段動かさないからだを思いっ切り動かすのでとても健康にはいいです。
 さて今日は先日読み終えた「怒涛の世紀」(文芸社文庫)について書きます。作者は森詠氏です。作者は昔から戦争ノーベルを書いていました。
 今回の「怒涛の世紀」は何と全12巻もあるのです。そんなに長い小説でしたが、結末が知りたくて最後まで読み通しました。読後の感想を一言でいえば、日本人の願望がそのまま出ているなと言うところです。
 以前書いたことのある中国崩壊論の小説版ともいえるでしょう。粗筋は中国で軍部強硬派のクーデターが起きて全権を掌握します。
 まずここで小説らしさが出ています。ご存じの方も多いと思いますが、中国軍(人民解放軍)では軍人のクーデターが起きないように党に絶対忠実な政治将校(政治委員)がいます。彼らが味方しない限り軍人が軍を動かすことはできないのです。
 ところが、この小説では政治将校(政治委員)がほとんどでません。先に進むと軍人たちが台湾侵攻計画を進めるのです。台湾では軍人たちに協力する勢力があって協力して台湾占領を進めます。
 危険を感じた台湾総統は日本に保護を求めます。中国軍はそれを追って軍を進め、のちには日本に対してミサイル攻撃を仕掛けてきます。
 中国国内では少数民族が続々と独立運動を始めます。さらには上海など大都市で反政府暴動が起き、また中国東北部や沿岸部が独立運動をおこします。
 軍内部の地域ごとに分裂し、内乱状態になります。ここでも軍内部の反乱を抑える役目をする政治将校のうごきがほとんどありません。
 台湾侵攻に対して国連は国連軍を結成して立ち向かいます。本来ならロシアが国連軍の結成に拒否権を発動すべきですが、それもしません。
 何とこの国連軍に日本の自衛隊も参加し中国国内で戦闘を繰り広げるのです。自衛隊は文字通り日本を自衛する部隊のはずですが、中国本土で敵戦車を攻撃し敵艦隊を撃滅するのです。
 今問題になっている敵地攻撃でころではありません。反乱を起こした軍隊を支援して中国軍を攻撃し撃滅するのです。こんなことを現実にしたら、戦争が終わった後中国国民の反感は大変なものがあるでしょう。
 反乱軍が日本の自衛隊や米軍と一緒になって中国軍(中国人)を大勢殺しているのです。共産党政権も嫌いでしょうが、だからと言って中国人が日本やアメリカと一緒になって中国人を大勢殺すのには抵抗があると思います。
 作者は日本人なのでそんなことに抵抗はありません。反乱軍が日本の自衛隊や米軍の協力を喜んでいるように書かれています。
 また小説では中国・日本・米国以外の国の動きがほとんど書かれていません。ロシアも北朝鮮も傍観しているだけです。
 常識的に考えれば北朝鮮は好機とばかりに韓国に攻め入るでしょう。米軍が中国で中国軍と戦いながら一方で韓国軍を支援するなど不可能です。二正面作戦は最も難しいのです。
 ロシアは黒竜江省やモンゴル・新疆ウイグル地区での勢力拡大をはかるでしょう。以前敦煌に行った時、ロシア人が敦煌莫高窟を住まいとしたと聞きました。このあたりまで以前はロシア人が進出していたのです。
 また新疆ウイグルではウイグル人独立運動をおこします。もし成功したら、この地区に住む100万人以上の中国人は皆立ち去らなければなりません。同時にそれまで行政経験も専門技術も持たないウイグル人に国家運営は難しいと思います。
 多分中東のようにイスラム過激派の根拠地となるでしょう。チベットも同様だし少数民族独立運動も同様です。スーダン内戦で独立した南スーダンがどうなったかを見れば容易に分かります。
 この小説では経済について何も触れられていません。日本や欧米の資本が中国国内に投資されています。このような内戦が起きれば全て灰燼に帰してしまいます。その損害は膨大でしょう。
 また国内が分裂すれば、経済にとって打撃です。日本や欧米諸国は分裂した中国に魅力を感じないでしょう。また中国への資源輸出でもっていたオーストラリアなどは打撃を受けます。
 黒竜江省から新疆ウイグルまで簡単に行けたのに、国内が分裂してそれぞれの地方が独立すれば、移動一つとっても大変です。それに中国の歴史を見れば分かるように、一度分裂しても必ずどこかで再統一の動きがでます。
 そうなると再び内戦です。小説だから何でも書けますが、3年間中国で過ごしたおじさんとしては、このような悲惨な戦争になってほしくないです。この小説通りならおじさんの教え子たち同士が殺し合うことになるからです。
 完全なノーベルとして読むなら痛快でおもしろいかもしれません。明日はいろいろ用事があります。