新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

高齢者所在不明問題を考える。

 今日も相変わらず真夏日です。中国も暑そうです。中国の学生さんからの(厳密には元学生さん・・卒業したので)メールでも、中国のおじさんの街は相当暑いようです。去年も9月なのに40度近い高温で学校が全て休校になったほどです。
 
 高齢者の所在不明問題は世界的な注目を集めているようですね。特に韓国や中国のような「忠」より「孝」を重視する儒教国家において、親がどこにいるか知らないとか、親が30年前に死んだのにその葬りもしないなぞ考えもつかないことでしょう。安全安心国家のはずの日本のそれも人知れぬ山奥でなく首都のど真ん中で起こったことは日本に対するイメージダウンは大きいと思います。
 
 市役所などを責めても、本来日本の行政は現場主義ではなく、書類主義ですから、書類が整っていればそれ以上はしないので当然起こるべき問題でしょう。それに、家族の中には入らない民事不介入は行政の原則なので、これも仕方ないと思います。
 
 それに相当な数のホームレスの人も、かってはどこかに住んでいて住民登録をしているはずですから、移転手続きをしなければ、そのまま前の住所が残っているはずです。ですから、これからこんな問題は多く起こるはずです。また、官報などを見ると「行旅死亡人」(昔風にいえば生き倒れ・・身元不明の死亡者)という項目があります。これはまさに、死んだけれどどこの誰か身元不明という意味です。
 
 この死亡した人の中にも、住民登録をかってした人も多いはずですから、当然そのままにしておけば、何歳までも生きていることになります。日本は戸籍制度や住民登録制度がきちんとしていますが、一度そこの住人となると自分で移転を申請しない限り削除されないことになります。
 
 このように考えていくと暗澹たる気持ちになります。世界に冠たる日本の長寿国家のイメージが崩れてしまいます。100歳以上の幽霊高齢者がこれだけいるということは、それ以下の高齢者となればさらに数が増えるでしょう。事件性でもないかぎり警察も関わらないと思います。
 
 このような問題が起るのは、やはり家族のきずなが崩れつつあるからでしょう。さりとて戦前のような家長制度に戻すことは不可能です。考えられるのは市町村などの地方政府に調査権限を与えることです。最近の自己責任の原則やプライバシーの保護(個人情報の保護)を強める動きがこのような結果を生んだとも考えられます。
 
 家族が生きていますというのにそれ以上市町村の関係者は立ち入れないのです。ただ市町村の場合国民健康保険などの使用状況である程度確認できると思います。国民健康保険は本人使用以外できないので、100歳を超えた高齢者が全く使用していない場合変だと思うことができます。
 
 また、年金関係でも100歳を超えた高齢者の年金が全く使われていない場合も変だということになります。それに、本人が死亡しているのに其の届けをしていないなら、それは明らかな犯罪なので警察で調べることもできます。日本の行政システムは性善説の上に成り立っています。
 
 実は性善説の上に成り立たせないと膨大な費用がかかるのです。アメリカのような国は性悪説の上に立っていますから、監査部門がとても充実しています。監査部門に行くことが出世の一歩なのです。中国でも市政監査の役人が大勢います。この問題を解決するためには今行われている行政改革と反対に行政拡大の方向になるでしょう。
 
 小さな政府でもとても対応できないのです。児童虐待もそうです。児童相談部門や生活支援部門は人手不足で大変です。小泉さんの提唱した自己責任による小さな政府や規制緩和による競争社会は当然弱い部分にしわ寄せがきます。人間は強くたくましい人は少なく弱く能力も乏しい人の方が圧倒的に多いのです。
 
 さて、これからどうなるのでしょうか。かって小泉改革喝采した国民もだんだん新自由主義(競争と規制緩和によって社会に活力をもたらす考え)に懐疑的になってきました。豊かな人もでたけれど、社会がどんどん劣悪化していることに気づきだしたようです。競争に敗れる人の方が当然圧倒的に多いわけですから、何らかの支援が必要なのではないでしょうか。
 
 今日は古い知人の方とお食事会です。だんだん中国に帰る日が近づいてきました。