新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

日中教育比較

 今日も朝濃霧だったので、これは晴れるぞと思ったら案の定午後から晴天になりました。おかげで洗濯物も乾きました。明日まで授業も午前中の1コマ(45分×2時間)だけです。今日は午後から日本概況の資料作りをしました。日本概況は今週は日本の伝統文化(茶道や武道や浮世絵など)をやり、来週から試験までの5回で日本の歴史をやります。
 
 近代は中国との戦争の歴史なので、このあたりはさらりと流して、明治以前を中心にやろうと思っています。何と言っても、日本の歴史(日本史)はとても5回(45分×10回)でできるものではないので、ポイントを絞ってやろうと思っています。大体予定は古代・中古(平安)・中世近世・近代・現代というところです。
 
 日本の歴史を通史で見た思ったこともありますが、それは別の機会に書くことにします。ひとつだけ言えることは、中国の歴史などに比べたら、本当に日本は平和な社会の歴史だと思います。特に外国(異民族)支配の経験を持たない、本当に例外的な国です。それが良くもあり、悪くもあるのでしょう。
 
 さて、今日のタイトルです。実は今日本から持ってきた2冊の本を読み終えているところです。一つは「教育と平等」 刈谷剛彦著(中公新書)と「日本の教育格差」 橘木俊詔著 (岩波新書)です。日本の教育格差については、すでに教師になってからずっと感じていたところなので新しい発見はありませんでした。
 
 しかし、「教育と平等」については、新しい発見がありました。日本の教育は平等を目指しています。その平等がいかに達成されたのかについての分析です。特に教育関係者以外になじみのない、教育財政の側面から分析しています。さらに義務教育標準法の設定に意義とその背景にある論理について触れています。日本の公立学校は、この義務教育標準法によって教師の人数から学校施設から全て決定され、それにともなって教育予算も成り立つているのです。
  
 この背景には、全国全ての子供は皆どこに住んでいても平等な教育を受けねばならないし、それは当然のことだとする国民の意識があるのです。そのためには、刈谷氏が述べたように、クラスの定員を全国同じにし、そのクラス数によって、教員の数を決め、さらに教える内容も同じにしたのだというのです。これだと、どこの県もどんなに不便な僻地も同じレベルになるのです。各種の施設・保健関係法では、学校に備えるべき設備についてもきめ細かく決めています。極端に言えば教室の明るさ確保のための照度から便所の便器の数に至るまでです。
 
 さて、中国あるいはその他の国はこのような考えはありません。それぞれの地域がそれぞれの地域の実情に合わせて教育を行っているのです。ですから、おじさんが以前見学した中国の四川省の田舎の小学校のように、床が土のままの学校もあるのです。
 
 日本であれば、どんなに不便な僻地に行っても、そこの設備は法律に従って大都会の学校と同じです。しかし、全国でこでも同じ教育をしなければなりません。各学校が独自に教育することは許されないのです。日本では全国どこでも同じ教育なので、おじさんが日本概況で、教育を取り上げた時おもわぬことが起こりました。
 
 日本では誰か一人の学校について聞けば、他の学生さんに聞かなくてもほぼ同じ内容です。しかし、授業で学生さんに聞くと、皆ばらばらなのです。そして、同じ市内でも自分の学校以外のことは分からないというのです。また、中国でも大学統一試験がありますが、地域ごとに問題が異なるのです。
 
 それに、少数民族の場合、得点が漢族(普通に中国人というと漢族です。)より低くても合格できるのだそうです。また、スポーツ推薦のようなものもあって、スポーツ推薦の学生さんは、大学の期末テストの成績が少し低くても単位がもらえるのだそうです。
 
 日本からみると中国のような一つの政党に支配されている一枚岩の国だから、教育制度は隅々まで統一されているだろうと考えられます。しかし、本当にばらばらなのです。例えば「実験小学校」とあるから、優秀な学校かと思うと、単なる名称ですと学生が言ったりします。
 
 また小学校は学区があるのですが、学区外からの入学もできます。けれど、日本の感覚で数十万円払わなければならないそうです。またマンション販売でも、名門小学校、名門中学が近くにあることを売りにしています。それに、学区外から転入する場合は、そのお金はマンション側が支払ったりします。
 
 日本では課外授業はせいぜい5時くらいまでですが、中学校によっては夜8時までやっています。もちろん高校入試の塾もあります。名門高への合格者数を売りにしていますし、家庭教師や土日、休暇中の塾の広告も盛んです。大学生も公務員受験講座はもちろん、大学が率先して面接指導講座を開いています。
 
 極端な講座では日本の感覚で100万円くらいの学費を地方公務員の面接講座でとって、もし不合格なら返却しますと書いてありました。ある面では日本と中国の公務員試験の過熱は同じです。(日本でも公務員受験予備校があり、そこに行かないと合格しないと言われます。おじさんも文章理解を教えたことがあります。)
 
 明日は週最後の楽勝日です。木曜日・金曜日とハードスケジュールが続きます。