新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

大学院予想問題(日本語日本文学研究科)について

 今日はさすがに寒くなりました。これまで昼間に暖房を入れることはほとんどなかったのですが、今日は昼間から暖房を入れました。おまけに朝濃霧だったので、晴れるかと思うと意外に晴れず1日曇りのままです。
 
 このところ政治ネタ(外交ネタ)ばかりなので、近況報告を書きます。ツマクマが日本に帰国してすでに1週間経過しました。2年前も1学期間一人で生活したことがあります。この時は中国に来て半年しか経過しておらず、街の様子も分からないし、大学の様子も分かりませんでした。
 
 おかげで、随分髪が白くなったのを覚えています。今回は11月下旬から1月上旬までの1月半くらいですし、街の様子も大学の様子も分かってきたので、かなり安心です。その分忙しい日々が続いています。今やっているのは、一つは日本の大学院を受験する教え子さんのための、大学院入試予想問題作りです。日本の大学2校と中国の大学1校の過去問を参考に時代ごとに、文学・思想・言語について問題を作っています。
 
 読者の中で日本文学科(日本語・日本文学科)卒業の方は少し問題を出しますので、考えてみてください。おじさんも、これは難しすぎると思うものばかりです。中国の大学の問題はやさしいです。大体中学3年生くらいの問題です。(例えば 次の読み方を書きなさい。 本居宣長松尾芭蕉などです。 あるいは、日本の国会は衆議院参議院である。これは正しいかなど)ところが日本の大学院の問題はけた外れに難しいです。
 
 例えば、次の事項を説明しなさい。「大友坂上郎女」「戦旗」「風葉和歌集」などです。これはある国立大学の問題です。これらは、専門に文学史を勉強した人には、何となく分かると思います。(風葉和歌集は別ですが。)もちろん常識的な問題もあります。日本文学に関心のある方なら分かる問題も多いです。例えば「種田山頭火」「破戒」「在原業平」「上田秋成」などです。高校時代の文学史で何となくやったという感じです。
 
 言語学関係になるとこの大学も難しくなります。「五十音図」「人称代名詞」くらいならよいのですが、「モダリテイ」や「混種語」「美化語」となるとちょっと日本語学(国語学)を勉強しておかないと難しいです。問題は学生さんが受験する某国立大学です。ここの問題はけた外れに難しいのです。
 
 この大学は文学・思想分野と言語分野、それに日本語教育学分野に分かれ、そのうち二つを選択します。今予想問題では、日本語教育学分野はやっていません。おじさんは全く日本語教育学をやったことがないので、先の2分野が終わった後に、問題研究をやる予定です。
 
 文学・思想分野は比較的常識的な問題が多いです。文学では「古事記」「蕉門」「宮沢賢治」「井伏鱒二」などです。これも日本文学史をきちんとやっていればできます。また、文化についても「オタク文化」「企業城下町」「伊勢神宮」「不易流行」などです。日本の現代文化もあるので、まずまずといったところです。
 
 ところが、思想分野でも「今和次郎」とか「加藤秀俊」などマイナーな人の名前がでます。問題は言語分野です。おじさんは大学で国語学(日本語学)特に日本語史を勉強したので分かる部分がありますが、近代文学などを専攻した人にはほとんど不可能な問題がでます。極めつけは次の2冊の本についてです。「捷解新語」「蜆縮涼鼓集」です。前は「しょうかいしんご」後は「けんしゅくりょうこしゅう」と読みます。おじさんは前の本については、少し知っていましたが、後ろの本は全く知りませんでした。
 
 答えは前の本は近世、日本人が朝鮮語を勉強するために用いたテキストです。後は「四つ仮名」(じ・ぢ・ず・づ)について解説した本です。中にはおじさんが、大学3年生の時書いたレポートの内容が試験に出ていました。「2段活用の1段化」です。これは古語で「でくる」(2段活用)が近世前半に「できる」(1段活用)に変化したことを言うのです。ちなみに九州地方では現在でも方言として2段活用を用いています。(実際に聞いたことがあります。)
 例 「そんなことできるものか」(共通語・標準語) 「そんなことでくるもんね」(九州北部方言)
 
 その他「女房詞」「母音調和」「角筆」などです。これらもおじさんが大学生の時、勉強したものです。「女房詞」と「角筆」は何とかこたえられますが、「母音調和」は名前は知っているのですが、内容は忘れました。というより、先生の説明を聞いても理解できなかったのです。今回学生さんのために勉強して理解できました。
 
 まだまだ難しい問題が待っています。「発話行為と行為遂行文」「テーマとレーマ」「分節素性と超分節素性」などです。これはほんの一部です。おじさんが大学を卒業して40年たちますが、その間に日本語学も進歩したのです。とてもついていけません。もし、大学院予想問題を作らなかったら、永遠に知らなかったないようです。
 
 ちなみにおじさんが全く理解不能日本語教育学の問題をいくつか書きます。中には統計用語もあります。まず「TBLT」「微少発生」「訓練場の転移」「認知ストラトジーメタ認知ストラトジー」「言語認識における統制的処理と自動的処理」などです。どうしてこんなことを知らないと日本語を教育できないのか全く理解できません。
 
 どうも現場で日本語を教えるのと、学問として日本語教育学をやるのは、相当離れているようです。こんな難しいことを勉強しても、日本語教育の現場では余り役に立たない気がするのですが。
 
 今日は読者の皆さんに受験生に戻って問題を提出してみました。こんな問題は全くできなくても、社会生活には何の支障ないのです。受験生を振り落とすための問題としか思えませんでした。明日は日曜日なので教会へ行きます。