新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

中国言語政策考

 今日は地獄の木曜日です。朝7時に家を出て夕方6時前に帰ってきました。まあ天気が良かったのでそれだけは救いです。しかし、帰ってマーボー豆腐を作ろうと思ったら、先日買った豆腐が悪くなっていました。パックの豆腐なので持つと思ったのですが、意外に持ちませんでした。明日、帰りにまた新鮮な豆腐を買ってマーボー豆腐を作ります。(マーボ豆腐の素があるのです。)
 
 さて、今日はD区で見た不思議な光景です。以前ある方から中国にあって日本にないものについて質問されて以来、そのことがいつも頭にあります。大学教師という資格なので、基本的には大学構内はフリーに歩きまわれるし、立て看板なども自由に見れます。
 
 もしこれが民間の人なら、大学生に咎められたりした時ちょっと困るし、中には反日の学生もいるでしょうから、さらに危険でしょう。しかし、自分の大学の先生に詰め寄ったりする学生はいません。それにおじさんは、少なくとも頭に霜を置く年齢です。年長者で自校の教員に対して敬意を払わない学生はまず少ないでしょう。(何と言っても儒教国家ですし、教師の日がある国ですから。)
 
 それで校内でのビラ・看板・宣伝活動は全てチェックしています。学生さんも大学の先生が自分達の活動に興味を示すのが不思議で、よく話しかけてきます。無視もできるのですが、後でトラブルになっても困るので、へたな英語で何とか答えています。
 
 今日はまず絶対に日本にない活動を見ました。何と「普通語(日本で言う標準語あるいは共通語)普及運動」です。食堂前の広場で、何かイベントがあっていました。作品が展示してあったので見ると書道と硬筆の書写です。中国では硬筆も盛んです。日本の大学でも書道部はあるでしょうが、一般の学生さんに呼び掛けて作品を提出してもらい、それに賞をつけて食堂前の広場に展示することはないと思います。
 
 そうして、さらに立て看板を見てみると、何と「語言之帆」(言葉の帆)とありました。さらに詳しく読むと中国の言語政策が良く分かりました。中国では今なお普通語(共通語)が普及していないのです。大学の至る所に普通語の使用を呼びかける看板があります。日本の大学で共通語(標準語)を使いましょうと呼びかけているとろこはないでしょう。どうも中国では先生に対しても方言で話しかける学生がいるようです。(教師には普通語で話しかけようという看板もあります。普通語は文明語という看板もあります。)
 
 その看板は普通語を使うことは自国の民族や地域の交流を推進する上で重要であるとします。さらに、日本人からするとちょっと大げさなのですが、普通語を使うことは「国家統一の維持、中華民族の凝集力を増強、教育の現代化に有利で」とここまでなら、何とか理解できるのですが、さらに格調高くなります。「世界に向け未来の戦略を弘め、優秀な伝統文化と愛国主義精神、社会主義精神文明に建設に強く」関係すると書いてあります。
 
  普通語を使うことは、愛国主義精神とも関連するとまで言っています。実は方言と普通語の問題は中国にとって大きな政策課題だと思います。多言語国家ならまだしも、同じ中国語でありながら、地域の方言が強すぎて、同じ中国人同士でもコミュニュケーションが十分できないのは、国家的損失だと政府は考えているようです。問題の深刻さは、その後あったイベントでも感じました。
 
 何と休み時間に学院(学部)のによる大型言語文学普及定住活動が行われました。食堂の階段のところに先生方が6人くらい並んで何か言っていました。内容は「中華規範言語文字応用」(中国の規範的な言語や文字を日常生活で活用しよう)くらいの意味の宣伝のようです。話しが終わった後、民族衣装の学生さんの踊りなどイベントがあっていました。
 
 日本でも明治維新後すぐ標準語設定運動が起こります。標準語はできませんでしたが、共通語となって今でもNHKのアナウンサーなどが話しています。おじさんが子供の頃確か方言を使わない運動があったようです。日本語と系統が分かれた沖縄語は、共通語との差異が大きかったので、日本に所属するようになってから方言撲滅運動のようなことをやったと聞きました。
 
 方言を使った子供には、罰として首から札を下げさせたという話しも聞きました。現在では大学で方言を話すと笑われるので、ほとんど日本の大学で使うことはないでしょう。そういう意味では日本の言語政策(共通語の普及政策)は成功したと言えます。標準語(普通語)を国民に使わせるというのは、中国政府の力をもってしても難しいものだと思いました。
 
 明日は金曜日、いよいよ週末です。しかし、試験の問題作りや解答作りで忙しいです。