新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

中国大学期末模様

 今日は朝から曇り空で、洗濯物も外に干さずに大学へ行きました。正解で、一日中肌寒い天気でした。このところ暖かい日が続いたのですが、中国西南部とはいえやはり12月は寒いです。1月初旬にいつも日本に帰るので、本当のこの街の冬は知りません。夏も同様です。
 
 さて、今日は最初の期末試験でした。大学院の「古典文法及び古典文学」という科目の試験です。中国の日本語教育は日本の国語教育とかなり重なる部分があります。大学の意地なのか、単純に日本語が書けて、読めて、聞けて、話せるだけではないのです。その周辺の勉強もあります。
 
 大学の学部でも選択科目ですが、「日本古典文学」があるし、「日本文学講読」も去年までありました。大学院でも「日本の社会と文化論」や「日本文学史特論」などもあります。学部でも「日本文学史」があるようです。ですから、国語教師以外の方が大学院で「古典文法及び古典文学」などを担当するのは大変だと思います。
 
 他の国では日本語教育でこのようなものはやらないようです。それで中国では日本語教師募集の条件に「高校国語教師経験者歓迎」とか「国語或いは社会の免許保持者希望」などという場合が多いです。おじさんも以前ちょっとそんなことを聞いたことがありましたが、実際行ってみてなるほどと思いました。(ただ大学によってカリキュラムが異なるようです。)以前は日本語能力検定に古典が出題されたそうです。(今はないそうです。)
 
 試験の方ですが、90分です。試験範囲はもちろん授業でやったところです。今年は「児の空寝」(宇治拾遺物語・・子供のお坊さんがぼたもちができるまで寝た振りをする話しです。)、「ありがたきもの・・めったにないもの」「香炉峰の雪」(枕草子)「養和の飢饉」(方丈記)「たけくらべ」(伊勢物語)「和歌」(万葉集古今集新古今集」などです。
 
 今年は「文学に見える人間の姿」をテーマにやりました。「児の空寝」では、おっちょこちょいな子供の姿、「ありがたきもの」では、時代を超えた人間の姿を教えました。たとえば、「お嫁さんのお父さんにほめられるお婿さんやお婿さんのお母さんに好かれるお嫁さんはすくない」という話しは中国人の学生さん皆が中国も同じですといいました。また「主人の悪口を言わない召使はめったにいない」では、皆さん高校時代、先生の悪口を言わない学生さんはいないでしょうと言うとすぐ納得してくれました。現代日本ならさしずめ「上司の悪口を言わない部下はめったにいない」というところでしょう。
 
 理由を聞いてもちゃんと答えてくれました。学生さんは、お父さんは大事な娘を取られたと思うしお母さんは大事な息子を取られたと思うからですと答えます。ついでに中国でもそうですかと聞くと、当然ですと学生さんが答えました。これは1000年前の日本の話しです。現代のそれも中国でも人間の気持ちは変わりませんねというと皆納得しました。
 
 「養和の飢饉」では飢饉で食料がない時、必ず愛情が深い方が先に死んだとあります。親子では当然親が先に死んだとあります。それはたまたま手に入った食料を子供に食べさせるからとあります。この話も学生さんは共感してくれました。どこの国どの時代でも親にとって子供は大切な宝ものなのです。中国では子供のことを「宝貝」と呼んでいるようです。
 
 「たけくらべ」では男と女の気持が描かれています。これも中国の学生さんは納得してくれました。ここで平安時代の結婚生活などについて説明しました。和歌については難しかったと思いますが、それなりにがんばってくれました。今年は学生さんののりもよくて授業しやすかったです。
 
 まず大学院の試験が終わって、来週は学部の授業の最終回です。その次の週に学部の試験が一斉にあります。問題の方はほぼ完成しました。明日印刷をお願いする予定です。こうして段々学期末が近付いてきます。正式に試験の日程が決定したら、帰国の飛行機便の予約をするつもりです。
 
 明日で今週の授業も終わりです。