新おじさん教師のひとりごと

長年高校教師をした後、中国の大学で日本語を教え、3年間過ごして帰国しました。今は引退して年金生活です。個人的な意見を書いています。

中国意外発見報告ー中国の教科書に出る日本の作品

 今日は朝は曇りでしたが、昼過ぎから雨になりました。天気予報は曇りのち晴れだったのですが。しかし、さすが商売に敏い中国です。雨が降り出すとすぐ傘を売るおばさんが多数現れました。といってもおじさんの街の雨は本降りはほとんどなく、小雨程度なので残念ながら余り売れていませんでした。
 
 日曜日なので教会へ行きました。クリスマス直前なので、教会の中もすっかりクリスマスモードです。大きな柱も金色の布で覆っていました。フロアーにはクリスマスツリーが飾ってあります。クリスマスの催しものもあるようです。ほとんどが午後7時からなので、ちょっと無理です。(おじさんの地区へ帰るバスは9時くらいでなくなります。)
 
 さて、今日は学生さんからの依頼で気がついたことを書きます。最近おじさんも興味深いブログのサイトにはコメントを書くようにしています。おかげでファンになってくださる方や訪問してくださる方が増えました。そんな方のコメントをみていると、中国では反日教育が徹底していて、大学生は基本的に反日感情が強いとお考えの方がありました。
 
 おじさんは中国の大学にいてそれほど反日的なものは感じませんが、中国の人は余り本音を言わないので、分かりません。とりあえず、反日集会や反日ビラなどはありません。ところが、最近ある学生さんから、卒業論文について依頼されました。その学生さんは日本の教科書に取り上げられた中国の作品と中国の教科書に取り上げられた日本の作品を比較してみるという研究です。
 
 おじさんは、それは無理でしょう、反日教育が盛んな中国の教科書に日本の作品が取り上げられるはずはないでしょうと言いました。日本の教科書で中国の作品と言えば、中学の国語教科書に出る「故郷」(魯迅)くらいしか知らないからです。小学校の教科書に「スーホーの白い馬」というのがあったような気がするのですが、モンゴルの話しだったようで自信がありません。
 
 ところが、先日学生さんが持ってきたリストを見てびっくりしました。何と6つもの作品が中国の教科書に取り上げられているのです。内容を詳しく見てみてさらに驚きました。こんな話は日本のマスコミは取り上げないのですよね。おじさんがブログを書くのはわずかな読者であっても、中国の実態を知ってもらいたいからです。
 
 一番驚いた作品から書きます。それは清岡卓行の「失われた両腕」(「手の変幻」が正式な名前です。)です。多分中国でも高校(高級中学)の教科書に掲載されていると思います。これは、高校の国語教師なら全員知っている定番なのです。(他の定番として「羅生門」「山月記」があります。)さらに言えば日本の高校生でも難解な日本語なのです。比喩に満ちているのです。
 
 中国の国語(「中文」と言います。)の授業でどうやって教えているのか知りたいほどです。日本にいた時でも、どのように教えるか同僚の先生と相談したものです。次に驚いたというより、笑ってしまったのは、何と「一杯のかけそば」(栗良平作)が中国の教科書にでているのだそうです。以前爆発的な話題を呼んでいつの間にか日本では忘れ去られてしまいました。どのレベルの教科書なのか分かりません。多分小学校だと思います。
 
 これも意外なものです。SF作家星新一の「お~い、でてこ~い」が取り上げられているのだそうです。これもどのレベルか分かりません。小学校かあるいは中学だろうと思います。私は読んだことがないのですが、学生さんによれば環境問題として取り上げているとのことでした。
 
 ちょっと古いものとしては、川端康成の「シンデレラの時計」というのも取り上げられているそうです。川端康成は中国でも有名です。これもおじさんは内容を全く知りません。椋鳩十の「金色の足跡」というのもあるそうです。彼は童話作家ですから、多分小学校の教科書でしょう。これも同様内容は知りません。さらには、作家の名前すら知らないものもあります。
 
 江田渙という人の「鶴」という小説です。依頼されたリストにあったのですが、おじさんも、全然知らないのでグーグルで検索して初めて知りました。日本人でそれも大学の国文科を卒業しても知らない作品です。「中学生の文学4」に収録されているとあったので中学の教科書だと思います。
 
 どこの国でも一番最初の教育である小学校教育はとても大切です。中国でも同様でしょう。人格や価値観の基礎が小学校で作られるからです。当然のことですが、小学校で使用する教科書も大切なはずです。自国の文化や言語を学ぶ国語教科書(中文教科書)に日本の文学作品が取り上げられることは本当に驚きです。
 
 日本でも教科書検定は文部科学書が行い、極めて厳格なものです。(時には裁判になるほどです。・・教科書裁判)お国柄を考えれば、中国でも同様だと思います。おじさんに依頼されたのは、日本で日本語で書かれた作品のコピーです。おじさんも是非知らない作品を読んでみたいと思います。
 
 中国の教科書編集者が、日本のこれらの作品のどこに共鳴し、何を中国の子供たちに教えるために、これらの作品を教科書に掲載したのか、本当に興味深いです。これもほとんどの日本人が知らない生の中国の実態なのです。
 
 明日まで休業日です。先日の大学院生の古典の期末試験の採点と、繁華街に出ておいしいフランスパンを買う予定です。